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インタビューInterview

税務のアドバイスから申告業務まで弁護士の相続案件をバックアップ

2017/11/06

内藤 克 税理士

――弁護士から相続案件の仕事を依頼されることが多いとお聞きしました。
 弁護士が相続人同士の揉めごとを解決する際、税務の知識が求められる場面が出てきますので、その部分をサポートしています。相続人同士の争いなんて関わりたくないと思われるかもしれませんが、そこを収めるのは弁護士の仕事で、私の役割はあくまでも税務に関するアドバイスだけです。そのまま相続税の申告を依頼されることも多いですが、その時点では遺産分割も終わっていますので、申告業務も非常にスムーズです。

――争いに巻き込まれるのは避けたいところですね。
 相続税の申告業務において一番怖いのは、税務署や税金ではなく、相続人の中から敵が出てくることではないでしょうか。その点、弁護士から依頼される相続案件は、相続人から「あなたは兄貴が依頼した税理士だからね」などと言われることもなく、安心して業務に取り組むことができます。何より、弁護士と一緒に仕事をすることで、相続人の間でどんなトラブルが起きているのか、それに対して弁護士はどのように解決するのかを学ぶことができますので、いつも新しい発見をさせてもらっています。

――参考になった事例を教えてください。
 夫が亡くなり、妻と子のほかに前妻の子が相続人というケースがありました。夫の自筆遺言が見つかったので、妻と子は弁護士に相談し、弁護士から前妻の子に対して検認の手続きに関する通知を出しましたが、まったく返事がありませんでした。前妻の子には遺留分があり、妻と子は早く渡してスッキリしたいと考えていましたが、音信不通のためどうすることもできません。葬式の案内なども出していますので、亡くなったことは分かっているはずですが、それだけでは前妻の子が相続の開始があったことを知っているとも断定できず、遺留分減殺請求権の消滅時効が1年ではなく10年になってしまう可能性もありました。

――時効まで10年となると気持ちが落ち着きませんね。
 妻と子は、前妻の子から遺留分の減殺請求をされた時のために、相続財産からその分をよけていましたが、「払うべきものは払っておきたい。時効までの10年の間に自分の身に何かあったらその相続はさらに複雑になる」という思いを弁護士に伝えました。そこで、弁護士サイドで前妻の子に対して「遺留分不存在の訴え」をするかどうかの検討が始まりました。相手方が反応すれば「相続の開始」を知ったことになり、減殺請求の期限へのカウントが始まります。手続き後、前妻の子は怒って連絡してきましたが、それが交渉の場に引きずり出すという弁護士の狙いだったわけです。

――弁護士からの相続案件の依頼を増やすコツなどはありますか。
 他事務所の税理士同士が一緒に仕事をするというケースは少ないですが、弁護士は一緒にチームを組んで仕事をすることが多く、お互いの距離感の保ち方とタイミングの取り方がうまい気がします。彼らは依頼者や相手方の弁護士に説明する必要がありますので、税理士が一緒に仕事をする場合は、条文や判例などを引用しながら、タイミングよく論理的に説明してあげることが重要だと考えます。つまり「恥をかかせない」ということです。あとは「税金第一」という考えを捨て、「今何が問題なのか?そのためにはどんな情報が必要なのか」を考えてあげることです。「先生と一緒に仕事をしていると弁護士と一緒に仕事をしているようだ」と言われるようになった頃、横のつながりでどんどん紹介が増えていきましたね。

――弁護士会のイベントにも参加されたそうですね。
 知り合いの弁護士に頼まれ、今年9月に開催した日弁連主催の弁護士業務改革シンポジウムに参加し、パネルディスカッションのパネラーを務めてきました。私が担当したテーマは「高齢者・障がい者のための遺言作成上の実務・課題」で、税理士の立場からコメントさせて頂きました。

――シンポジウムに参加して、何か感じたことはありますか。
 弁護士業界では、「相続は弁護士」というスタンスであるということを強く感じました。ライバルは信託銀行と行政書士という感じで、税理士は紛争解決というよりも計算処理する存在として捉えられている印象を受けました。弁護士のところに相談が持ち込まれる前に、税理士がある程度解決していることを理解している弁護士は少ないと思います。当日は、若手の弁護士もたくさん参加していたので、「税理士は経営者や資産家の悩みを聞く機会が多いので、是非、若手税理士との交流の機会をたくさん持っていただき、トラブルが起きた後ではなく、トラブルが起きる前に悩みを解決してくれるような役割を期待しています」と話したところ、皆さん興味深く聞いていました。

――顧客ニーズに応えるためにも他士業とのネットワークは重要ですね。
 確かに、他士業とのネットワークを構築することは大切ですが、相手が自分と一緒に仕事をしたいと思ってもらえなければ意味がありません。また、相続案件を受注したいのであれば、ただ待っているだけでなく、どこに対して、どのようなアプローチをすればよいのかを日頃から考えることも重要です。

――内藤先生はこれまでどんなアプローチをされたことがありますか。
 以前、富裕層向けの老人ホームが、入居者向けの手引書を作成することになり、その中の遺言と相続のコーナーを執筆しました。後日、実際に手引書を隅から隅まで読んでいる入居者は少ないと思い、その老人ホームの運営会社に連絡して、遺言と相続の部分について無料の勉強会を5回シリーズで行わせてもらえないかと提案したことがあります。入居者にも大変喜んでもらい、その後も定期的に無料相談会を開催していますが、「今日は内藤先生が来る日だね」などと心待ちにしてくれている方もいます。

――そこから仕事に繋がりましたか。
 相談件数は増えていますが、その件数と仕事に結びつく件数は比例しません。法人顧問と違い「税理士を交代する」のではなく「税理士と初めて付き合う」ため、仕事になるまで時間がかかります。経営者であれば税理士との付き合いもある程度理解していますが、コンサルティングという目に見えないサービスに対して料金が発生するということが分かった瞬間、距離を置く方もいらっしゃいます。この点、弁護士であれば「最初から報酬が発生する」と覚悟の上で相談される感じがします。

――今後の展開が期待されますね。
 そうですね。いずれにしてもアクションを起こさなければ、チャンスは何も生まれません。これまでも、ハワイに住んでいる日本人の富裕層向けにホノルルで相続セミナーを開催したり、相続税法の改正に合わせて相続シミュレーションアプリの開発も手掛けました。登録政治資金監査人がスタートした時には、議員会館を訪れてパッケージ料金を記載したチラシをポスティングしたこともあります。これからもチャンスを広げるために、いろいろなことに挑戦していきたいと思います。

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