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税務の勘所Vital Point of Tax

もうすぐ確定申告 税理士事務所の青色事業専従者給与にご注意!【後編】

2017/01/31

◎事例2)給与の支給額が相当額か
 税理士の配偶者が税理士事務所の副所長として専ら従事していたにもかかわらず、給与の支給額が、不相当に高額であるとして高額部分の経費性を否認した「相当の対価」をめぐる事例がある(平25. 5.29裁決)。本事例で国税不服審判所が給与の相当額を検討するために用いた手法が、「使用人給与比準方式」と「類似同業専従者給与比準方式」だ。

 使用人給与比準方式とは、他の使用人の給与を比較するものであり、配偶者と使用人の労務の経験や性質、時間がほぼ近い職員を抽出することが前提となる。これにより近似の職員との比較がなされた結果、1.6倍程度の乖離が認められた。

 また、一方の類似同業専従者給与比準方式は、業種、事業規模の類似性等の基礎的要件に欠けるところがない限り、比較した青色専従者給与の金額を平均することで、類似同業青色専従者の個別具体的事情等の客観性が高められる合理的な方法であるとして、国税サイドが採用した数字を客観性があると断定。これによると、2倍程度も高額と認定されている。国税不服審判所は、両方式により著しく高額と認定し、配偶者への支給額は適正相当額とは認められないとする判断を行った。

類似同業社の資料提出申立ては不可
 納税者サイドで使用人給与比準方式を行うことは可能だが、類似同業専従者給与比準方式は基礎的資料を要するため容易ではない。

 その資料を有する課税サイドに対して裁判所に提出命令を求めた裁判がある(広島高(松江支部)決平23.2.21)。しかし、裁判所は、納税者の求めを斥けており、課税サイドが採用した比準を行うための根拠資料を入手する途は閉ざされている。

実務の対応はどうする?
 青色事業専従者給与に対する税務判断は、ケースバイケースの対応が求められ、また国税サイドでは精緻な証拠の集積を行っていることが分かる。そのため、税務否認を受けないためには、納税者サイドでも客観的な事実の用意が必須であることが理解できよう。

 だが、それは容易ではない。「専ら従事」要件を満たすためには、他に職がある場合には、基本的に課税サイドの理解は得られないと思われる。例えば、昼間は税理士事務所で勤務し、夜間は別の職場など合理的な説明ができることや、日頃の勤務の実態を客観的に説明できる詳細な記録、具体的にはパソコンの操作時間とその内容などを備える必要があるだろう。

 また、給与額が相当であることに関して、配偶者が副所長などの地位にある場合には、それと同程度の経験や職責にある職員の給与との比較を行うとともに、2倍程度の乖離がある場合には、その職責の重要性を説明する資料を用意できなければ、課税サイドの納得を得ることは困難を極めよう。

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