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税務の勘所Vital Point of Tax

もうすぐ確定申告 税理士事務所の青色事業専従者給与にご注意!【前編】

2017/01/30

◎青色事業専従者給与とは
 青色事業専従者給与制度の概略は次のとおり。

(1) 青色申告者の個人事業主が一定の要件の下に実際に支払った給与の額を必要経費とする青色事業専従者給与の特例をいい、青色事業専従者とは次の要件を満たす者である。
 ①青色申告者と生計を一にする配偶者その他の親族であること。
 ②その年の12月31日現在で年齢が15歳以上であること。
 ③その年を通じて6月を超える期間、その青色申告者の営む事業に専ら従事していること。
(2) 「青色事業専従者給与に関する届出書」を納税地の所轄税務署長に提出していること。
(3) 青色事業専従者給与の額が「労務の対価として相当」であること、などである(所法57)。

 この中で、最近、税理士事務所で発生したトラブルが、上記(1)③の税理士事務所に「専ら従事」していたかということと、(3)「相当の対価」か、をめぐる争いだ。

◎事例1)税理士事務所に「専ら従事」していたか
 
税理士事務所で税務・会計業務に従事し「所長代理」の地位にあった税理士の配偶者に支払われた青色事業専従者給与が否認された事例がある(東京地判平28.9.30)。

 その否認の根拠だが、配偶者が不動産管理会社3社の役員などを務めていたことから、国税当局は「専ら従事」していたのは税理士事務所ではなく、不動産管理会社と認定したためだ。この事件で争点となったのが、所得税法施行令165条2項2号に定める「専ら従事」の判定基準。他に職業を有する者であっても、その職業に従事する時間が短いものである場合は青色事業専従者給与として認めるというもので、本事件の場合には、不動産管理会社の従事時間が短いかどうかが争われた。

 では、それをどのように判断すべきなのだろうか。参考となるのが、納税者である弁護士の事務所に従事した妻の青色事業専従者の該当性が争われた別の事件の判決(東京高判平22.10.20)。そこでは、次のように判断基準を示している。

 弁護士が営む事業に専ら専従しているかは、画一的基準を設けることはできず、その事案において、弁護士の営む「事業の事業形態、親族が従事している具体的労務内容やその事務量等を総合勘案し、社会通念に従って判断するほかはない」というもの。

立証責任は国側にあるため精緻な証拠固め
 
東京国税局の国税訟務官室は、この東京高判平22.10.20を受けて「調査に生かす判決情報」(平成23年10月)を作成している。

 
 同資料で、国側は、納税者(弁護士)の配偶者がその事業に専ら従事していないことについて、裁判所の理解を得るために、弁護士事務所やその自宅における業務内容やその状況、弁護士が雇用する事務員の業務内容等の間接事実のほか、配偶者の事業従事内容やその状況等について、調査担当者が調査時に見聞きした内容をまとめた調査報告書のみならず、提訴後に作成した調査担当者の陳述書に基づき立証することで裁判所の理解を得ることができたもの、と分析。

 そして、青色事業専従者該当性を検討するに当たっては、上記の判断基準に即した事実関係を確認するにとどまらず、課税処分に関する立証責任は原則として課税庁にあることを念頭に、それらの事実を裏付ける証拠の収集・保全に努めることが重要となる、と結ぶ。

 本事件でも納税者である税理士は「配偶者の一日」と題する資料を作成し提出しているものの、一方の国側も実際の労働実態を解明すべく納税者や配偶者に詳細な聴取を行った結果、裁判所は国側の証拠能力に説得力を見出したわけだ。 【後編に続く】

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