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税務の勘所Vital Point of Tax

不倫関係だった男女の金銭バトル そして国税との争いへ②

2017/05/24

 (①のつづき)マンションの購入資金等を手に入れた真弓だったが、それは新たなバトルの始まりでもあった。そもそも、その資金は孝一のものだ。それが真弓の手に渡ったのであれば、裁判でも示されているように「贈与」と考えられる。もし贈与であれば、税金も払わず、すべて自由に使っていいとは、税務当局が認めるわけがない。

 真弓が手に入れた資金について、当局は、①建物の購入が実現しないことを解除条件とした贈与による取得したもの、②この贈与は、解除条件の成就により解除されたが、不法原因給付に当たるため、金員の返還請求がなされることはないこと、③金員が返還された事実は認められないこと――、といった事実から、相続税法第9条の規定により贈与によって取得したものと判断。平成27年3月、真弓に対して平成22年分の贈与税と無申告加算税の賦課決定処分を下したのだ。

 この処分に納得がいかない真弓は、国税不服審判所に審査請求を行った。孝一から手に入れたマンションの購入資金、真弓への「贈与」でなければ、一体何なのか――。この資金について真弓は、「孝一との裁判の頃から、心身に疾患を抱えて現在も通院加療中である。したがって、返還を要しないとされた金員は、心身に受けた損害に対する慰謝料ないし賠償金であり、損失を受けた部分に対する補填である」として、相続税法第9条に規定する「対価を支払わないで利益を受けた場合」に該当しないと主張した。

 慰謝料、賠償金、損失の補填・・・そんな真弓の訴えに審判所は、そもそも孝一が真弓に口座を開設させ、そこにマンションの購入資金を入金させたのは、「建物の登記名義を孝一と真弓の共有とするに当たり、贈与税対策のため、真弓の名義の預金口座から売買代金が支払われている必要があると考えたためである」などの認定事実を踏まえ、孝一が渡した金銭は「売買契約の残代金の支払等に充てるために贈与されたものであり、慰謝料等の性質を有するものとは認めらない」と指摘。

 さらに、孝一との資金返還をめぐる過去の裁判で、真弓は自分が手に入れた資金について「孝一が私の歓心を買って関係を継続するために贈与したもの」などと主張している点を突き、当局による課税処分を適法と判断。真弓の主張は退けられることとなった。

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