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税務の勘所Vital Point of Tax

相続税の課税対象者が大幅増 課税割合は全国で8.0%、東京局管内は12.7%

2016/12/27

 高齢化社会が急速に進む中、被相続人数(亡くなった人)が増加傾向にある。被相続人数は、平成15年に初めて100万人を突破(約101万人)し、その後も年々増加。国税庁がこのほど発表した平成27年分の相続税の申告状況によると、平成27年1月1日~同年12月31日の1年間における被相続人数(亡くなった人)は129万444人。過去最高だった前年の127万3004人よりも1万7440人の増加となった。

 注目したいのは、平成27年1月1日以後の相続等については、平成25年度税制改正による基礎控除額の引下げ等が行われている点だ。基礎控除額が、これまでの「5000万円+(法定相続人の数)×1000万円」から「3000万円+(法定相続人の数)×600万円」となったことで、相続税の課税対象者や課税割合がどれだけ増加するのか、税理士業界や富裕層の間で関心が集まっていた。

 申告状況によると、平成27年分における相続税の課税対象となった被相続人数は10万3043人。前年分の5万6239人から83.2%の大幅アップとなった。課税割合は8.0%で、こちらも前年分の4.4%より3.6ポイント増加している。

 課税価格の合計は、前年分の11兆4766億円から14兆5554億円へ増加。税額についても、前年分1兆3908億円から1兆8116億円まで増加している。

 一方、被相続人1人当たりの課税価格は、前年分の1人当たり2億407万円から1億4126万円に減少。税額についても、前年分の1人当たり2473万円から1758万円に下がっている。これは、基礎控除額が引き下げられたことで、相続財産額が比較的少ない層が課税対象に含まれたことが要因と考えられる。

 相続財産の金額の構成比を見てみると、「土地」38.0%、「現金・預貯金等」30.7%、「有価証券」14.9%、「家屋」5.3%、「その他」11.0%の順となっている。昨年とほぼ同じ割合だが、過去10年間の推移を見ると、「現金・預貯金等」の割合が年々微増しており、20年前は7割以上、10年前でも約5割あった「土地」の割合が4割を切っている。

 これまで相続税を“他人事”と捉えていた人も、都市部にマイホームを所有し、そのほか金融資産などを所有していれば、今後、課税対象に該当する可能性は十分にある。実際、都市部の状況を見ると、平成27年分の東京局管内における相続税の課税対象者は3万2209人(対前年比173.1%)、課税割合は12.7%(同5.2ポイント増)。大阪局管内の課税対象者は1万6670人(同173.0%)、課税割合は8.2%(同3.4ポイント増)。名古屋局管内の課税対象者は1万6031 人(同186.6%)、課税割合は11.0%(同4.9ポイント増加)と、いずれも大きく上昇している。

 いずれにしても、相続の問題については「発生した後」ではなく「発生する前」に対策を講じておきたいところだ。

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