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準確定申告で配偶者控除を適用後、相続した不動産を売却したら?

2016/09/07

<質問>
 夫が今年の6月に亡くなりました。私は専業主婦ですので、夫の準確定申告でも配偶者控除の適用を受けて申告しました。その後、分割協議も終わり、相続税の納税のために、相続により取得した不動産の一部を年内に売却しました。その結果、控除対象配偶者に該当しないことになりました。この場合に、修正申告をしなければならないでしょうか。また、夫の相続財産に賃貸不動産が含まれていますが、配偶者控除の取扱いは異なりますか。

<回答>
〇見積り合計所得金額について
 控除対象配偶者とは、居住者の配偶者でその者と生計を一にする者のうち合計所得金額が38万円以下である者(所法2①三三)をいいます。年の中途において死亡した者の配偶者その他の親族が、その被相続人の控除対象配偶者や扶養親族に該当するかどうかについて、①親族等が被相続人と生計を一にしていたか、及び親族関係にあったかどうかは、その死亡時の現況により判定し、②その親族等が控除対象配偶者若しくは配偶者又は扶養親族に該当するかどうかは、その死亡の時の現況により見積もったその年1月1日から12月31日までのその親族等の合計所得金額により判定することになります(所基通85-1)。

 この死亡の時の現況により見積もった合計所得金額とは、その年1月1日から死亡の時までに発生した所得ではなく、12月31日までに継続して見込まれる所得金額をいいます。準確定申告の内容が、その年の12月31日現況と異なる場合には、更正の請求又は修正申告による是正措置が必要となります。

 ところで、譲渡所得のように偶発的な事由により発生した所得は、その死亡の時から12月31日までに、その所得を予め見積もることはできません。そのため、合計所得金額の判定には影響がないものと考えられます。したがって、不動産を売却したことにより、所得金額が38万円を超えても、修正申告をする必要はありません。

〇相続財産に賃貸不動産が含まれている場合
 相続開始から遺産分割までの間に相続財産である賃貸不動産から生じた賃料債権は、被相続人の遺産とは別個の財産であって、「各共同相続人がその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得され、後にされた遺産分割の影響はない」とされています(最高裁 平17.9.8)。

 したがって、あなたの場合には、被相続人の死亡時から不動産所得が生じていることになります。まず、「被相続人の相続開始の日までの不動産所得の金額」を「被相続人の1月1日から相続開始までの期間」で除し、これに「相続開始の日の翌日から12月31日までの期間」を乗じた金額を算定します。次に、その見積もり金額にあなたの法定相続分を乗じた金額が、あなたの合計所得金額となり、配偶者控除の適用となる限度を超えている場合には、配偶者控除の適用を受けることはできません(平21.12.7裁決)。

(今回のアドバイザー:竹内税務会計事務所 竹内春美税理士)

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