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相続財産に含まれる名義預金

2016/07/22

<質問>
 夫が亡くなり、相続税の申告書を作成する過程において、収入のない家族名義になっている定期預金を相続財産として申告する必要があるかどうかの判断に迷っています。税理士さんから、そのお金も相続財産に含まれると言われました。どうしてでしょうか?税務調査において、調査担当者はどのような基準で他人名義の財産を被相続人に帰属する財産と判断するのでしょうか。

<回答>
  相続税等の国税は、一般的に実質の所有者や所得者に課税する実質課税主義を取っているといわれています。

 名義の如何を問わず、実質被相続人に帰属する財産は、相続財産として相続税の課税対象となります。

 名義預金や名義株など他人名義の財産の帰属の判断ポイントは、①誰がその財産を管理・運用・支配しているか、②利息や配当金などの法定果実を誰が受け取っているのか、③その財産の設定・取得の原資は誰が負担しているか等だと思います。

 具体的には、①預金通帳、証書、届出印鑑、キャッシュカード等を誰が所持しているのか、通帳や印鑑を被相続人が保管しているときは預金口座に入金していたのは被相続人ではないか疑問を持たれます。②その保管場所が、被相続人の自宅の金庫、被相続人の主宰法人の金庫、被相続人名義の貸金庫等であれば、被相続人の財産ではないか疑われます。③預金通帳等の所持や保管の状況は相続開始時点ではどうだったのか、調査日現在はどうなのか、④預金や株式の取引の指示は誰が行っていたのか、⑤その預金等の設定の原資、株式等の購入原資は誰が負担していたのか、⑥設定や購入の原資が被相続人の資金の場合は贈与が行われているか否か、贈与税の申告や納税を行っているか等が財産の帰属の判断のポイントだと思います。

死亡日前後の預金の引き出し
 相続税の税務調査では、被相続人の預金口座から高額な出金があるときは、その使途を確認されます。特に、死亡の日前後の預金の引き出しは必ず確認されます。相続があったことを金融機関に知られると、すぐには預金を引き出すことができなくなってしまうので、葬式費用等のために早めに引き出しておくことがしばしばありますし、相続の前に預金を引き出して、財産減らしをしようという心理が働くため、預金を引き出すケースが多いからです。

 これらの引出したお金で、家族の名義の預金になっているものは、名義預金として相続財産に加えられることになります。

 調査担当者は、必要に応じて銀行等の反面調査を実施して、預金や株式取引口座の開設申込書、払い出し請求書等の筆跡の確認、銀行や証券会社等の取引担当者の聞き取り調査を行っているようです。

 これらの要素を総合勘案して財産が誰に帰属するかを判断することになりますが、その預金等が名義人に帰属する財産と判断するには、名義人がその預金等を管理・支配し、自由に使えて処分できる状況にあることが必要であると思います。何れにしろ、財産の帰属の判断は、個々の事例に応じて財産の帰属の判断の各要素を総合勘案して行うことになると思われます。

(今回のアドバイザー:一般社団法人租税調査研究会・主任研究員 米山英一税理士)

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