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税務バトルから学ぶ 審判所の視点 ザ・ジャッジ

土地譲渡のコンサル料  譲渡実現に必要な費用とは認めず

2016/09/30

 請求人Aとその姉Bは、Cから賃借していた土地の上に共同住宅を2棟ずつ所有し、いずれも賃貸の用に供していた。平成1 0年にCが亡くなり、Cの相続人から土地を購入してほしい旨の提案を受けたが、代金が高すぎるとしてその提案を断った。だが、請求人Aの弟で不動産仲介業などを行っているL社の代表取締役Dは、土地を取得しても損をすることはないと考え、AとBやそれぞれの夫に土地を取得するように説得し、2人は土地を取得した。その際、AとBは弟Dとの間で、土地を譲渡するまでL社が各建物や土地に係る面倒をみること、土地を譲渡した時に譲渡利益の半分を支払うことで合意した。
 
 
Dは共同住宅について、①壁の錆びた部分のペンキ塗り、②排水溝の詰まりの解消、③扉の鍵の交換④戸の歪みの補正などを行った。また、共同住宅の賃借人の一人が亡くなった時、風評による土地の価値の低下を防ぐための助言や、将来土地を譲渡するために賃借人らの立退きに関する助言などをAとBに行った。平成17年、姉Bが亡くなり、その子である請求人E、F、GがBの土地等を取得した。

 平成20年頃、Aが土地を譲渡したいと考えて弟Dに相談したところ、Dは賃借人に立ち退いてもらう方法や、立退きを求める内容証明郵便の文面の確認、譲渡の交渉で用意すべき書類などを助言し、譲渡先候補として複数の不動産業者を紹介した。平成23年、請求人らはDの紹介先ではないQ社に土地を譲渡。その後、Dとの約束通り、譲渡利益の一部をL社に支払った。

 請求人らは、土地を譲渡した際にDに支払った金員の一部がコンサルタント料に該当するとして、土地譲渡に係る分離長期譲渡所得の金額の計算上、譲渡に要した費用に算入して所得税の確定申告を行った。しかし、原処分庁は譲渡費用に当たらないとして更正処分等をしたことから争いが生じた。

土地の取得や譲渡において必要不可欠な行為か否か?

 争点は、L社に支払った金員が、土地の取得費または譲渡費用に該当するか否か。

 請求人らは、「AとBは、L社から強く説得されて土地を取得しており、その説得は土地取得に必要不可欠だった」「L社は長期に渡って共同住宅の改良行為を行っており、その対価は改良費に当たる」「賃借人の立退きに関する行為、立退きに関する助言は、土地を譲渡するために必要だった」などとして、L社に支払ったコンサルタント料は、土地の取得費または譲渡費用に該当すると主張。


 これに対して審判所は、「Dの説得がなければ、AやBは土地を取得することはなかったといえる。しかし、それは土地取得を決意するに当たっての事前の働きかけにすぎず、土地の取得自体に必要なものとはいえず、取得するための付随費用ともいえないから土地の取得費には該当しない」、「L社の改良行為は、一般の修繕または維持管理であり、建物の価値を高めるとは認められず、改良行為には該当しない」、「Dの立退きに関する行為や助言は、賃借人らとの立退交渉でもなければ内容証明郵便の文書の作成でもなく、立退きを実行するために必要なものとはいえない」、「Dの挙げた不動産業者ではないQ社に土地を譲渡している」などとして、土地の譲渡を実現するために必要な費用であったとは認められないと判断。金員は土地の取得費または譲渡費用に該当しないとした。

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