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税務バトルから学ぶ 審判所の視点 ザ・ジャッジ

店舗の賃貸人が非居住者に 源泉所得税の期限後納付に「正当な理由」あり!

2016/07/22

 請求人Aは平成17年9月、賃貸人Gとの間で店舗と土地を賃借する契約を交わした。
 当時、Gは日本国内の会社に勤務していたが、平成22年11月30日に退職し、その後、韓国の会社に就職するため、平成23年11月28日に出国。これにともない、Gは非居住者に該当することとなった。

 非居住者等から日本国内にある土地や建物等の不動産を借りる場合、その賃借料を支払う際に所得税を源泉徴収しなければならない。しかし、Aはこれまでと同じように源泉徴収をせず、平成24年1月分および2月分の賃借料をGの口座に振り込んだ。

 Gは、税務署から平成24年3月21日付で「非居住者に対する源泉徴収の免除証明書」の交付を受けた。そして、Aがその提示を受けたのは翌月17日で、実際に提示してきたのは、Gから店舗などの管理を任されている管理人だった。

 Gが非居住者になったことを知ったAは、同年1月分と2月分の賃借料に係る源泉所得税を法定期限後に納付。これに対して原処分庁が賦課決定処分を行ったため、その取消しを求めて争いが勃発した。

納税者の責めに帰することのできない
客観的な事情の有無

 今回の争点は、Aが法定期限内に源泉所得税を納付しなかったことについて、例外的に不納付加算税が課されない「正当な理由があると認められる場合」に該当するか否か。

 Aは、「店舗などの管理は管理人に任せており、賃借料の支払いは、賃貸人口座に毎月振り込んでいることから、賃貸人との接触は従来から全くなかった」、「管理人から本件免除証明書の提示を受けた際、初めてGが非居住者になったことを知り、源泉徴収を行う必要がある旨の説明を受けたことから、各源泉所得税額を納付した」として、期限後納付となったことには『正当な理由がある』と訴えた。

 一方の当局は、「請求人は、その支払いの都度、賃貸人が居住者か非居住者かを確認する義務があるところ、単にその確認を怠ったものであるから『正当な理由があると認められる場合』には当たらない」と指摘した。

 両者の主張に対して審判所は、まず、国税通則法に規定する「正当な理由があると認められる場合」とは、「真に納税者の責めに帰することのできない客観的な事情があり、納税者に不納付加算税を賦課することが不当または酷になる場合をいう」との基準を示した。

 そして、「請求人は、平成24年4月17日に管理人から連絡があって初めて賃貸人が非居住者になったことを知ったと認められ、同年1月分と2月分の賃借料について所得税を源泉徴収すべきであったことを認識し、同年4月26日に納付手続きを採っており、管理人から連絡後、遅滞なく納付する意思を有していたと認められる」と指摘。源泉所得税を法定期限までに納付しなかった原因は、「賃貸人からの連絡が遅れたためと認められる」として請求人の主張を支持する判断を下した。

 なお、「請求人には店舗などの賃借料の支払いの都度、賃貸人が居住者か非居住者かを確認する義務があった」という当局の指摘に対し、審判所は「本件賃貸借契約に係る取引のように、賃貸人等との接触をほとんど必要としない取引について、そのような煩雑な手続きを採ることが必要であるとするのは合理的ではない」と判断している。

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