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税務バトルから学ぶ 審判所の視点 ザ・ジャッジ

役員給与の額は妥当か否か? 請求人は「代表者の職務は格別」と主張

2018/04/27

 請求人は、自動車販売業等を営む法人で、主としてB国の自動車販売業者向けに中古自動車の輸出を行っており、平成23年7月期(平成22年8月1日から平成23年7月31日までの事業年度)から平成27年7月期までAが代表取締役を務めていた。

 請求人は、代表者Aに対し、各事業年度において役員給与を支給し、法人税の所得金額の計算において損金の額に算入した。

 これに対し原処分庁は、役員給与相当額の算定では、同業類似法人の役員給与の支給事例における役員給与の平均額または最高額を用いることが相当として、同業類似業種9社を抽出。その結果、代表者Aの役員給与の額は、同業類似法人の代表取締役に支給された役員給与の平均額はもちろんのこと、最高額と比較しても極めて高額で、明らかに不相当に高額な部分の金額があるとして、その最高額を超える部分の金額は損金の額に算入されないと判断、更正処分等を行った。

 請求人は、代表者Aの職務は格別であり、原処分庁が採用した同業類似法人の抽出基準は合理性を有するものではなく、役員給与の額について不相当に高額な部分はないとして争いが勃発した。

同業類似法人の代表者給与の最高額を超える部分は不相当

 争点は、代表者Aの役員給与の額には、不相当に高額な部分の金額として損金の額に算入されない金額があるか否か。

 請求人は、「代表者Aの職務の内容は、広告宣伝、クライアントとの関係の構築、クレームへの対応など、事業全般にわたるもので、一般に想定される範囲を超えるものであることは明らかであり、同業類似法人の代表取締役に対する役員給与の最高額をもって、役員給与相当額ということはできない」、「原処分庁は、各事業年度における収益の状況が減少傾向にあると主張するが、営利企業における役員給与の額の相当性を検討するに当たり、売上金額の増減を検討すること自体には意味がない」などと主張。

 これに対し審判所は、「請求人は、代表者Aの職務の内容は、請求人の事業全般にわたるものである旨主張するが、代表者Aは、株式会社の代表取締役であることから、業務を執行すべき職責上、その職務の内容が請求人の事業全般にわたることは一般的に想定される範囲内のものであるというほかなく、中古自動車の卸売業における事業内容に照らしても、代表者Aの職務の内容が特別に高額な役員給与を支給すべきほどのものであるとまでは評価し難く、原処分庁が採用した同業類似法人の抽出基準は合理性があるものと認められる」と指摘。

 また、「代表者Aの職務内容に大きな変化はなく、請求人の収益の状況および使用人給与の支給状況もおおむね一定であるところ、役員給与の額は同業類似法人の代表者に対する役員給与の額の最高額を上回るものであり、しかも最高額を支給する法人は、請求人よりも相当に経営状況が良好と評価される点を鑑みれば、本件役員給与の額のうち最高額を超える部分の金額は不相当に高額な部分の金額であるといえる」などと判断した。

 ただし、「原処分庁が抽出した同業類似法人の中に、請求人とは業種の異なる法人が認められることから、同社を同業類似法人から除外した上で役員給与相当額を算定し、不相当に高額な部分の金額として損金の額に算入されない金額を計算すると、原処分の額を下回ることから、原処分の一部を取り消すのが相当」とした。

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