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税務バトルから学ぶ 審判所の視点 ザ・ジャッジ

書面によらない死因贈与 契約の効力めぐる争いで相続税が期限後申告に!?

2016/12/08

 平成21年1月に死亡した被相続人A。法定相続人は、Aの兄(昭和59年5月死亡)の子Yのみだった。しかし、Aは生前、法定相続人ではない従妹の請求人Xに対し、「全財産をやる」などと手紙や会話でやり取りをしていた。

 相続発生後、Aの財産をめぐり、XとYが裁判所で争うこととなった。Xは、Aが全財産を自分に贈与する旨の書面による死因贈与契約を締結しており、全財産の権利を取得したと主張。一方のYは、①死因贈与契約は不成立である旨と、②仮に死因贈与契約が成立していたとしても、書面によらない死因贈与であり、死因贈与契約を撤回する旨を主張した。

 その後、両者の和解が成立し、Xの死因贈与契約の一部が認められた。なお、和解では、死因贈与が書面によるものか否かについては明らかにしていない。これを受けてXは、平成23年12月に相続税の申告を行った。ところが、原処分庁から期限後申告として無申告加算税の賦課決定処分を受けたことで、処分取消をめぐるバトルが勃発したのだ。

相続の開始があったことを知った日はいつの時点か?

 
Xは、「民法によれば書面によらない贈与は当事者が撤回することができ、当事者が死亡した場合は相続人も撤回することができると解される。本件において、XとAとの間の死因贈与契約に係る契約書は存在せず、また、相続人は書面で死因贈与契約を撤回している。このため、裁判上の和解が成立するか、AとXとの間の死因贈与契約が書面による贈与であると認定する判決が確定しない限り、XはAの財産を取得することができず、納付すべき税額も確定しない。そうなると、相続の開始があったことを知った日は、和解が成立した日である」と主張。

 一方、原処分庁は、「Aは、Xとの間で、自らの死亡を停止条件として、自らの全財産をXに贈与する旨の死因贈与契約を締結しており、死因贈与契約は有効に成立している。Yとの訴訟が係属中でも、相続税法上租税債権の成立を妨げるものではなく、死因贈与には民法により遺贈の規定が準用されることなどからすると、相続の開始があったことを知った日は、XがAの死亡を知った日である」と指摘した。

 これに対して審判所は、「Xが本件訴訟において裁判所に提出した各書証の客観的な記載から死因贈与が書面によるものであると認めることはできず、審判所の調査でも認めるに足りる証拠はないから、死因贈与は書面によらないものとみるのが相当」と判断。そのため、「書面によらない贈与は、その履行が終わるまでは各当事者が自由にこれを撤回することができる。また、全財産に係る死因贈与契約が成立していたとしても、Yが死因贈与契約の存在を知れば、これを撤回する可能性が極めて高かったことが推認される」とした。

 そして、「和解の成立前の時点において、Aの全財産を死因贈与により取得したとするXの権利は極めてぜい弱なもので、和解の成立前においてXが自己のために相続の開始があったことを知ったものとは認められない。そうすると、Xが自己のために相続の開始があったことを知ったのは、和解により死因贈与契約の履行が確定した日というべきである」として、本件申告書は期限内申告書に当たり、期限後申告であることを前提になされた原処分を違法と判断した。

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