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税務バトルから学ぶ 審判所の視点 ザ・ジャッジ

滞納の原因は税務署への相談? 「税金はかからない」と言ったのに・・・

2017/02/20

 平成11年分の所得税の確定申告について、請求人Aは税務相談を受けるために税務署を訪れた。その際、職員から「特別控除の範囲内なので税金はかからない」と言われた。

 税金はかからない――。その言葉を受け、Aは手持ちの資金で家具などを購入した。ところが、確定申告を行うために再び税務署を訪れると、今度は「特別控除に該当しない部分があるので、税金がかかる」と言われたのだ。

 資金を使ってしまい、Aは税金を納めることが困難に。そして平成12年5月、徴収担当の職員から電話が入り、財産を担保に出す方法や納税できない場合は差押えも検討せざるを得ないことが告げられた。

 2カ月後、Aは徴収担当の職員と面接を行い、滞納した国税について年金収入から最低1万円ずつ納付する納付計画などを記した納付誓約書を提出。その後、Aは同年8月と10月に1万円を納付したが、その後は納付が途絶え、平成13年と平成14年は5千円の納付を4回、平成15年から平成21年8月までは毎偶数月に5千円(平成16年12月は1万円)、平成21年10月に1万円を納付した。

滞納した国税を10年間かけて分割納付したが・・・
 計画通りとはいかないが、Aは10年間に渡って税金を納めてきた。しかし、平成21年10月、税務署の担当職員から「納付方法について相談したいので、具体的な納付計画を準備してほしい」と電話があった。Aは担当職員と面接を行い、「一括納付は現時点では困難」、「2カ月に一度の分割納付金を5千円から1万円に増額する」、「長期分割納付を引続き継続する」ことを申し出たが、職員から「長期分割納付を認めるには差押えが前提」と言われ、Aが所有する不動産の一部について差押え処分が行われた。


 これを不服としたAは、国税不服審判所に審査請求を行った。Aは、「申告相談を行ったとき、税務署の職員から税金がかからないと言われたので家具などを買ってしまった。最初の相談の後、すぐに税金がかかると連絡してくれれば、税金を納めることができた。ゆえに、滞納原因は当局にある」と指摘。

 さらに、「少額ではあるが分割納付を約10年間継続し、その間、差押えの話もなかった。それなのに、一方的に差押え処分を実施したことは、信義則に反して違法または不当である」と主張した。

これに対して審判所は、「平成12年6月に督促状が発せられ、差押え処分はその日から10日を経過した日後に行われており、その時点において滞納国税は完納されておらず、差押えの要件は満たされている」と指摘。

 また、「(申告の相談は)税務官庁が公的見解を表示したものではないため、差押え処分が信義則に反することを基礎づけるものではない」、「差押え処分は、納税者の意思にかかわりなく強制的に行われるもので、納税者が一部でも納付の意思を表示すれば、差押え処分ができなくなる旨や納税者の了解を得なければならない旨を定めた法令の規定はない」、「Aが主張する申告相談の事情は、滞納に至った原因であり、滞納原因を考慮して差押え処分の実施の可否を判断する裁量を原処分庁は有していない」、「分割納付はしているが、納付計画に従ったものではなく、国税が完納される可能性は著しく低かったといわざるを得ない」などとして、Aの主張を退ける判断を下した。

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