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税務バトルから学ぶ 審判所の視点 ザ・ジャッジ

相続税の「お尋ね」に財産不記載 税務調査後の期限後申告は重加算税?

2017/04/26

 請求人の父(被相続人)が平成24年11月に死亡し、相続が開始した。相続人は長男である請求人のみだった。

 請求人は、相続税の申告をすることなく、法定申告期限が経過した。これに対して原処分庁は、平成26年2月20日付で、請求人に対し「相続税の申告等についての御案内」および「相続についてのお尋ね」と題する書面を送付。これを受け取った請求人は、被相続人と同居していた自宅の土地・建物と、Q口座の預金を相続財産として記載し、お尋ねの回答書を原処分庁に提出した。

 平成26年9月、相続税の調査を受けた請求人は、当初、相続財産について回答書の内容と同様の申述を行ったが、調査担当者は被相続人のほかの預金口座の存在を把握しており、「請求人が解約したものがあるようだ心当たりはないか」などと質問が及ぶと、「被相続人の成年後見人か何か代理人のような人と解約の手続きに行った気がするが、詳しくは覚えていない」などと回答。最終的に、調査担当者から「各口座の預金は被相続人の相続財産である」などと指摘を受け、請求人は相続税の期限後申告をした。

 そして、原処分庁は、「職員から指摘された口座についてのみ段階的にこれを認める行為を繰り返したのであるから、国税通則法第68条《重加算税》第2項に規定する隠ぺい又は仮装の事実がある」として重加算税の賦課決定処分をしたところ、請求人はこれを不服として処分の取消しを求めて争いが起きた。

 争点は、請求人が法定申告期限までに申告書を提出しなかったことが、重加算税の賦課要件を満たすか否か――。

相続税申告書の未提出は計画的な隠ぺい・秘匿か?

 
審判所は、まず、「無申告加算税に代えて重加算税を課す場合、法定申告期限の前後を含む、外形的、客観的な事情を合わせ考えれば、真実の相続財産を隠ぺいし、秘匿しようという確定的な意図、態勢の下に、計画的に納税申告書を提出しなかったときには、通則法第68条第2項が規定する重加算税の賦課要件に当たると解するのが相当である」との法令解釈を示した。

 そして、「請求人は、お尋ね回答書に各口座の預金を記載せずに原処分庁に提出し、また、相続税の調査の際、調査担当者に対して、お尋ね回答書の記載内容に沿った申述をし、各口座の存在を隠している」などと指摘。

 しかしながら、「請求人は、調査担当者から各口座の相続手続について指摘されるとその存在を認めており、各口座の預金を隠す態度を一貫していたとはいえない」、「請求人は、各口座が発見されることを防止したり、各口座の預金が相続財産に含まれないように装ったりする等の積極的な措置を行っていないことからすれば、本件お尋ね回答書を提出したことや、調査の当初は各口座の存在を隠していたことをもって、隠ぺい又は仮装の行為と評価することは困難である」とした。

 これらを踏まえ、「請求人は、各口座の預金を隠ぺいし、秘匿しようという確定的な意図、態勢の下に、計画的に相続税の申告書を提出しなかったとまではいえないというべきであるから、重加算税の賦課要件を満たさない」との判断を下している。

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