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税務バトルから学ぶ 審判所の視点 ザ・ジャッジ

破産手続中に株式を相続 残余財産分配金に対する所得課税は二重課税!?

2016/12/15

 平成18年10月に同族会社L社の代表取締役が死亡し、相続人である請求人Dおよび請求人F(以下、「請求人ら」という)が、L社の株式を取得した。

 L社は、平成16年10月に地裁から破産宣告を受け、破産手続中だった。破産手続きは平成19年5月に終結し、同月に清算手続きが開始。請求人らは、清算手続き開始後の同年8月に本件相続に係る相続税の申告書を原処分庁に提出した。

 平成22年、L社は株主である請求人らに対し、会社解散による残余財産分配金を支払い、清算手続きが結了。この分配金のうち、請求人らは剰余金の配当とみなされる金銭(以下、みなし配当金)の額を配当所得として記載した平成22年分の所得税の確定申告書を提出した。

 しかしその後、相続する際に相続税の課税を受けているため、本件の配当所得は所得税法第9条(非課税所得)第1項第16号に規定する「相続、遺贈又は個人からの贈与により取得するもの」に当たり、二重課税になるとして更正の請求を行った。だが、当局がこれを認めず、争いが勃発した。
 争点は、請求人らの配当所得が、非課税所得に該当するか否かだ。

所得税法9条1項16号の非課税所得をめぐりバトル

 
請求人らは、「解散して清算手続中の会社の株式は、分配される残余財産と経済的価値を同じくする同一の財産である」、「所得税法第9条第1項第16号の非課税規定は、二重課税を回避する趣旨であるが、株式を相続によって取得した請求人らは、残余財産分配金を相続によって取得したことになり、それは非課税規定に該当するので、残余財産分配金に所得税が課税されることはなく、その一部である配当所得の金額にも所得税が課税されることはあり得ない」と主張。


 一方、原処分庁は、「相続税の課税対象となったのは本件株式であって、残余財産の分配見込額ではないから、請求人らの主張はその前提を誤ったものと認められ、理由がない」、「請求人らが相続によって取得した株式と、みなし配当金が同一の経済的価値であるとは認められない」などとして、更正をすべき理由がないとした。

 これに対して審判所は、「請求人らが相続に基づき株式を取得したことによって請求人らに帰属した所得(本件相続の開始時における株式の価額に相当する経済的価値)は、本件相続を直接の原因として請求人らの下で実現したものであるから、非課税規定の『相続、遺贈又は個人からの贈与により取得するもの』に該当する。しかしながら、請求人らが各みなし配当金を取得したことによって請求人らに帰属した所得については、相続の開始後3年以上の期間が経過してから、残余財産が最終的に確定したことによって初めて請求人らの下で実現したものというべきである。相続開始時において清算手続きは開始すらされておらず、みなし配当金の支払原因となる具体的な残余財産分配請求権は確定的に発生していなかったのであるから、本件相続を直接の原因として実現があったものとすることはできない。したがって、非課税規定に該当するとは認めることができない」として当局の判断を支持している。

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