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税務バトルから学ぶ 審判所の視点 ザ・ジャッジ

被相続人の家族名義の預貯金 管理・運用状況などを総合的に勘案した結果・・・

2016/07/22

 平成21年に被相続人Aが死亡し、配偶者B、子のC、その妻でAの養子であるDの3人が共同相続人として相続税の申告書を期限内に共同で提出した。

 その後、原処分庁が調査を実施。申告書作成を担当したX税理士は、平成24年2月10日の調査において、C・Dの夫婦、その子であるE、F、G(以下、この3名を併せて「孫ら」という)が名義人となっている預貯金等について、平成10年末から相続開始日までの金額の移動状況などを記載した資料を調査担当職員に提出した。なお、平成1 8年にはC・Dの夫婦、孫らがP社の株式をそれぞれAから贈与を受け、いずれも期限内に贈与税の申告をしている。

 原処分庁は「管理・運用状況、原資となった金員の出損者および贈与の事実等を総合的に勘案すると、共同相続人およびその親族名義の預貯金等は、Aの相続財産に該当する」と判断。相続税の各更正処分および重加算税の各賦課決定処分を行った。共同相続人らは、「本件預貯金等は、各名義人固有の財産であり、相続財産には該当しない」として、その全部の取消しを求めて争いが発生した。

具体的な出損の状況など主張立証がない点を指摘

 審判所はまず、「預貯金等は、現金化や別の名義の預貯金等への預け替えが容易にでき、また、家族名義を使用することはよく見られることであるから、その名義と実際の帰属とがそごする場合も少なくない。そうすると、預貯金等については単に名義のみならず、その管理・運用状況や、その原資となった金員の出損者、贈与の事実の有無等を総合的に勘案してその帰属を判断するのが相当」という考え方を示した。

 そして、原処分庁の主張に対し「預貯金等の管理状況については、単にBが平成17年まで管理していたと主張するのみで、使用印鑑の状況や保管場所などの管理状況について何ら具体的に主張立証を行わず、また、その出損者については、相続開始日前3年間の被相続人の収入が多額であることなどを挙げるのみで、具体的な出損の状況について何ら主張立証をしていない」と指摘。

 さらに、「審判所の調査結果でも、被相続人、請求人らおよびその家族の名義で取引先の金融機関に提出された印鑑届等の筆跡・印影から、本件預貯金等は名義人が管理・運用していたと推認されるものの、その出損者は誰であるか認定することはできず、また、被相続人から請求人らに対する贈与の事実の有無については、贈与がなかったと認めるには至らなかった。したがって、本件預貯金等の管理・運用の状況、原資となった金員の出損者および贈与の事実の有無等を総合的に勘案しても、本件預貯金等が被相続人に帰属する、すなわち相続財産に該当すると認めることはできない」と判断した。

 なお、原処分庁はEの名義預金について、設定時の印鑑が被相続人Aのもので、当時Eは4歳だったことから、出損者はAであると主張したが、審判所は「請求人らは、出損者は母親のDと主張しており、審判所の調査でも出損者がAとは認めることができず、届出印も平成13年にEが使用している印鑑に改印され、以後の管理はC・D夫婦が行っていると認められる。これらを総合的に判断すれば、E名義預金についてもAの相続財産に該当するとは認められない」としている。

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