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税務バトルから学ぶ 審判所の視点 ザ・ジャッジ

転貸建物を明渡す際の補償金 一時所得か、それとも不動産所得か?

2016/10/26

 請求人Aは、B社が所有する地下2階・地上6階建てのビルのうち、地下1階、地下2階、中2階部分を賃借し、これらのフロアをC社に転貸していた。

 平成19年、B社はビルを売却するため、請求人Aと賃貸借契約を解除することで合意。B社から請求人側に8000万円を支払うなど、明渡しの条件を提示したが、当時、転借人であるC社は焼鳥店を経営しており、退去後に別の場所で焼鳥店を再開するには、少なくとも1億2000万~1億3000万円程度の費用がかかると見込まれた。また、請求人側の賃借期間は40年以上と非常に長く、B社への貢献を考えても8000万円では少ないとして、明渡し費用について交渉が難航した。

 しかし、ビルの売却はすでに決まっており、譲渡期限も間近に迫っていたため、B社は請求人Aの意向を踏まえ、最終的に1億6000万円の支払いで合意に至った。ただ、その時点では焼鳥店再開の目途が立っておらず、C社に支払う具体的な費用が算定できなかった。そこで、請求人A は税理士に依頼し、賃借料と転貸料を基に計算した結果、C社への明渡し補償金として1億3628万円を支払った。

 その後、請求人Aは、B社から受け取った金銭を一時所得として確定申告を行ったところ、不動産所得の収入金額に算入すべきとして、当局が更正処分ならびに過少申告加算税の賦課決定処分を行ったことから争いが発生した。

受領した金員の使途が所得区分のポイントに
 
 請求人Aは、「B社から受け取った金員は、転借人のC社とともにビルから退去するための単なる明渡し料または協力金のため、その全額が一時所得に該当する」と主張。


 一方、当局サイドは、「請求人AがC社に支払った金員は、所得税基本通達37-23により、請求人の不動産所得の計算上、必要経費に算入すべきもの。そうすると、B 社が支払った金員は、請求人Aの不動産所得の必要経費を補填する金額のため、所得税基本通達34-1の(7)の注書きにより、請求人Aの不動産所得の計算上総収入金額に算入されるべき」と反論した。

 これに対して審判所は、「B社から受け取った金員は、請求人AがC社に支払った金員を補填するもの、すなわち不動産所得の必要経費に算入すべき金額を補填する金額のため、その補填金も不動産所得に係る総収入金額に算入すべき」と判断。

 ただし、B社から受領した金員とC社に支払った金員の差額については、「請求人Aは、C社の焼鳥店再開の費用を念頭において提案金額の増額を要求したのに対し、B社は譲渡期限が迫っていたことで賃貸借契約の合意解除を急ぎ、請求人側の主張を受け入れて1億6000万円を支払っている。交渉過程を踏まえても、請求人Aが焼鳥店の再開費用以外のものを求めていたとはいえず、金員の差額については、その性質および使途等について特定されていない金額と認められる」として一時所得に該当すると判断、当局の処分を一部取り消した。

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