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教えて熊王先生 消費税の落とし穴はココだ!税理士 熊王征秀

共同相続人の遺産分割協議 消費税の納税義務の判定は?

2016/07/22

Q.  不動産賃貸業を営む被相続人について、平成27年に相続が発生しました。相続人は、妻(無職)と子供2人(給与所得者)の計3人であり、被相続人の平成25年中の家賃収入(課税売上高)は1,600万円です。平成27年中に遺産分割協議が成立したことにより、賃貸物件のうち、長男が4分の3、次男が4分の1の持分を承継することとなりました。なお、被相続人の賃貸物件は、遺産分割が確定するまでの間は相続人の共有に属するものと認識しておりますが、不動産賃貸業から生ずる収入は、共同相続人の了承の下、便宜上、長男の口座に入金されています。この場合における各相続人の平成27年分の納税義務についてご教示ください。

A.
○ 財産が未分割の場合の納税義務の判定
 被相続人の基準期間における課税売上高が1,000万円を超える場合には、事業を承継した相続人は、納税義務の免除の特例規定により、相続があった日の翌日から課税事業者となります(消法10①)。ただし、相続財産が未分割の場合には、財産の分割が実行されるまでの間は各相続人が共同して被相続人の事業を承継したものとして取り扱うこととされていますので、判定に用いる被相続人の基準期間における課税売上高は、各相続人の法定相続分に応じた割合を乗じた金額により判定することになります(消基通1-5-5)。

○ 相続があった年の翌年に遺産分割が確定した場合
 年の中途において遺産分割が確定した場合には、民法909条(分割の遡及効)の規定に基づき、遺産の分割は相続開始の時に遡ってその効力を生ずることとされています。

 しかしながら、消費税は税の転嫁を予定して立法されているものであり、その年の納税義務の有無については、その年の前年12月31日の現況に基づいて判定すべきであるという考え方が、平成24年9月18日付の東京国税局の文書回答により明らかにされています。また、法定相続分に応じて判定したことにより免税事業者となった相続人が、遺産分割が確定したことにより、結果として事業の全部を承継したとしても、その事実により、相続人の当初の納税義務判定が覆ることはありません。

○ 相続があった年に遺産分割協議が確定した場合
 相続があった年に遺産分割協議が確定した場合における、共同相続人の相続があった年の消費税の納税義務については、次の①と②のような二つの考え方がありました。

①東京国税局の文書回答を準用し、法定相続分に応じて判定する。

②民法909条(分割の遡及効)の規定に基づき、遺産の分割は相続開始の時に遡ってその効力を生ずるものと解釈する。

 本事例の場合、①により法定相続分割合で納税義務を判定すると免税事業者となる一方で、②により実際の相続分割合で納税義務を判定すると、長男は相続のあった日の翌日から課税事業者に該当することになってしまいます。

 1,600万円×3/4=1,200万円>1,000万円

 この問題について、平成27年3月24日付の大阪国税局の文書回答では、相続があった年に遺産分割協議が確定した場合における共同相続人の消費税の納税義務の判定についても、法定相続分割合により、相続人の納税義務を判定することができる旨が明らかにされました。結果、平成27年分の各相続人の納税義務はすべて免除されることになります。

<プロフィール>
熊王 征秀 税理士
昭和59年学校法人大原学園に税理士科物品税法の講師として入社し、在職中に酒税法、消費税法の講座を創設。平成4年同校を退職し、会計事務所勤務。平成6年税理士登録。平成9年独立開業。東京税理士会会員相談室委員、東京税理士会調査研究部委員、日本税務会計学会委員、大原大学院大学准教授ほか。消費税関連の書籍も多数執筆。

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