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トラブルは現場で起きている!

学校法人への税務調査に対する理事長の怒り

2017/01/20

 公益法人等における源泉所得税の税務調査で、収益事業が見つかって申告漏れを指摘されるケースは少なくありません。しかし、その調査が違法だとして国に損害賠償を求めたケースはあまり聞いたことがないでしょう。でも、今からもう10年ほど前になりますが、中国地方のある県でそういう事件があったんです。

 登場するのは、この地方でいくつも学校を経営する学校法人の理事長、おそらく地元の名士に違いありません。そこに税務調査に入ったのが、この学校法人を所轄する税務署の特別国税調査官と上席国税調査官でした。源泉徴収の調査で補助元帳をめくっているうち、申告していない収益事業がいくつもあることを発見しました。

 学校内で食堂や売店を営んでいる会社から得ている使用料、電柱や基地局の賃貸料、アンテナの設置料、これらは不動産貸付業というれっきとした収益事業です。それから、物品販売業に当たる自動販売機の手数料や仲立業に当たるポロシャツの販売手数料、さらには請負業に当たる団体保険の集金事務手数料までぼろぼろ出てきたのです。

 学校法人側は、これは教育事業に付随する事業であって、収益事業ではないと主張しましたが、税務署はこれらの事業は一般私企業が行う事業と変わりがない収益事業であるとして法人税決定処分を行いました。

 これに対して、学校法人と理事長は国家賠償法に基づき国に損害賠償を求める訴えを起こしたのです。それは、国税調査官が理事長らに何の挨拶もせず、秘密裏に、所得税の源泉徴収に関係しない帳簿を見て、法人税に関する調査を実施した。これは権限を逸脱した違法なものである。そして、理事長は、このような違法な調査により、精神的、肉体的に苦痛を受け、申告漏れがあったとされたことは学校にとっては著しく不名誉なことであり、名誉が傷つけられたというものでした。理事長の、怒り心頭に発する顔が目に浮かぶような訴えではありませんか。

 しかし、地方裁判所の判決は、国税調査官らの調査は違法ではなく、損害賠償請求には理由がない。よって、請求を棄却するというしごく当たり前のものでした。

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