公示地価 コロナ前の回復傾向顕著に 全用途2年連続で上昇
2023/03/29
国土交通省はさきごろ、令和5年1月1日時点の公示地価を発表した。調査地点は2万6000地点。それによると、住宅地や商業地といった全用途の全国平均は前年比1.6%上昇し、2年連続のプラスとなった。用途別でも、住宅地1.4%、商業地1.8%、工業地3.1%といずれも上昇した。
三大都市圏でも地価は上昇している。
東京圏・・・全用途2.4%、住宅地2.1%、商業地3.0%、工業地5.0%
大阪圏・・・全用途1.2%、住宅地0.7%、商業地2.3%、工業地4.0%
名古屋圏・・全用途2.6%、住宅地2.3%、商業地3.4%、工業地3.3%

東京圏を見ると、東京都では住宅地、商業地ともに23区すべて上昇。住宅地で上昇率が大きかったのは、台東区 4.8%、豊島区 4.7%、中野区 4.6%。商業地では、再開発事業エリアなどを中心に上昇傾向が見られ、中野区5.2%、北区5.2%、荒川区5.2%の上昇率が目立った。千代田区、中央区、港区は、飲食や観光客に関連した需要減退をはじめ、オフィス市況の先行き不透明感から地価の下落が続いていたが、人流の回復傾向などによって上昇に転じている。
大阪圏では、大阪市の商業地は3.3%上昇した。インバウンド需要の影響が大きかった心斎橋・なんば地区では、国内観光客の回復や訪日外国人観光客の回復期待もあり、店舗需要は回復傾向となっている。
名古屋圏では、名古屋市の商業地が5.0%上昇。特に、名駅周辺や栄地区では大規模再開発による発展期体感があり、また、住宅地と同様にマンション用地としての需要が堅調であることから地価は上昇傾向で推移している。
一方、地方圏を見ると、地方四市(札幌市、仙台市、広島市、福岡市)では上昇率が拡大しており、全用途8.5%、住宅地8.6%、商業地8.1%、工業地9.6%のプラスとなった。いずれも10年連続の上昇となり、四市の中心部の地価上昇にともない需要が波及した周辺の市町では高い上昇率を見せている。
なお、令和5年公示地価の上昇率トップは、住宅地、商業地ともに北海道北広島市で、住宅地は30%、商業地は28.4%のプラスとなった。また、全国の地価トップは、東京・銀座の山野楽器銀座本店の1平方メートルあたり5380万円で、前年から1.5%上昇した。
公示地価は、新型コロナの影響により商業地を中心に下落に転じていたが、令和5年地価公示の結果を踏まえ国土交通省は、「新型コロナの影響で弱含んでいた地価は、ウィズコロナの下で、景気が緩やかに持ち直している中、地域や用途などにより差があるものの、都市部を中心に上昇が継続するとともに、地方部においても上昇範囲が広がるなど、コロナ前への回復傾向が顕著となった」と分析している。