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税務の勘所Vital Point of Tax

相続時精算課税を選択していたのに‥ 暦年贈与で申告して特別控除できず

2020/01/21

 顧問税理士の失念を原因とする税務処理のミスは少なくない。例えば、消費税の還付を受けるために課税事業者選択届出書を提出する必要があったものの、届出書の提出を失念してしまい、還付を受けられず納税者から損賠賠償を請求されるケース。こうした消費税の届出書の提出を失念するミスは、㈱日税連保険サービスが公表している「税理士職業賠償責任保険・事故事例」でもよく出てくる事例だ。

 最近では、過去に相続時精算課税制度を選択して現金の贈与を申告したのに、顧問税理士がその選択を失念したことでトラブルになった事例がある(国税不服審判所、平成31年2月22日裁決)。

 相続時精算課税制度とは、その年の1月1日現在で60歳以上の父母・祖父母である直系尊属から、20歳以上の子・孫へ贈与があった場合、贈与額2500万円までは特別控除により事実上贈与税が課税されず、それを超える金額の贈与には一律20%の税率で課税される制度。贈与した人と財産をもらった人の組み合わせごとに選択することが可能で、贈与した直系尊属の父母等が亡くなり相続が発生した場合は、相続時精算課税制度でもらっていた財産を相続財産に加算し、相続税が算出される場合には支払い済みの贈与税を引いて精算する仕組みとなっている。

 相続時精算課税制度の選択は、いったん行われると後で解消することができない。そのため、相続時精算課税制度を選択した後、間違って暦年課税で贈与税を申告してしまうと、不都合が生じることになる。

 トラブルになった事例は、納税者Aさんが平成24年に父親から現金をもらったことに端を発する。裁決書によると、Aさんは贈与税の申告にあたり、B税理士に依頼して父親を特定贈与者とする相続時精算課税選択届出書を添付し、贈与税の申告書を法定申告期限内に税務署に提出してもらった。

 その後、Aさんは平成28年に父親から再びまとまった現金贈与を受けた。その際にもB税理士に贈与税の申告を依頼したが、B税理士は、4年前の贈与で相続時精算課税制度を選択していたことを失念。暦年課税によって課税価格および税額を計算した申告書を提出してしまったのだ。もちろん、申告書には相続時精算課税制度の特別控除の残りを適用する旨の記載は一切していなかった。

更正の請求が認められる「やむを得ない事情」はない

 平成29年になってAさんは誤りに気づき、平成28年分の贈与税について誤って暦年課税により申告し、相続時精算課税制度の特別控除の適用がなされていないことを理由として、贈与税を訂正する「更正の請求」をした。しかし、税務署から更正すべき理由はないとされたうえ、税額に誤りがあったとして更正処分を受けたことで、Aさんは国税不服審判所で争うこととした。

 審判所は、相続時精算課税制度の特別控除について、法律上、期限内申告書にその特別控除を受ける金額、既に特別控除の適用を受けて控除した金額がある場合の控除した金額その他財務省令で定める事項の記載がある場合に限り適用すること(相続税法第21条の12第2項)とされていることを確認。

 それを踏まえて審判所は「申告書にその記載がなかった理由は、B税理士がAさんの平成24年分の贈与税の申告事績の確認を失念したことによるものと認められるところ、Aさんは、相続税法第21条の12第3項が規定する同条第2項に規定する所定の事項の記載がなかったことについての「やむを得ない事情」を何ら主張しておらず、審判所の調査によっても「やむを得ない事情」は見当たらない。これらのことからすると、課税価格から本件特別控除額を控除することは認められない」と判断した。

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