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「借金は破産しそうな弟に集める!」 これってアリ?

2019/03/06

「先生聞いてください。弟のギャンブル好きにはホトホト困り果ててるんです」
「亡くなったお母様も弟さんのお金の使い方について心配していましたね」
「それなのにこの間もまたギャンブル仲間の借金の保証人になってしまって・・・このままでは破産してしまいますよ」
「なんとか出直してほしいですね」
「今回の親父の相続も、閉鎖する事業の負債が多くて困っているんですよ。いっそ親父の負債を全部弟に引き継いでもらって、そのまま破産してもらいたいほどです!」
「債務については相手があることなので、そうはいかないんですよ」
「相続人同士が遺産分割協議書で決めてもですか?」
「はい」

■相続ではマイナス財産も引き継ぐ
 相続ではプラス財産だけでなくマイナス財産も引き継ぐ決まりになっています。そのため「親の借金が多すぎるので相続放棄した」という話もよく聞きます。

 ただし債務は相続人である子供(第1順位)が放棄をしてもこの世から消えてなくなるわけではなく、第2順位である親、第3順位である兄弟姉妹に引き継がれるため、事前に親族に話を通しておかなければいけません。
 今回は放棄せずに借金を引き継ぐケースであり、「相続人同士で決めた割合が第三者である債権者に対して有効なのか」が問題となります。
 民法では「債務は遺産分割協議でどう決めようが遺言でどう指定しようが、法定相続分で引き継がれる」ことになっています。
 したがって冒頭のケースのように相続人の1人に債務を押しつけて自己破産させた場合でも、第三者に対しては無効となり、相続人全員が法定相続分で負担することになります。これは民法では債務の負担者や割合を調整することで、債権者に不利にならないように扱うことになっているためです。
 一方、ここが複雑なのですが、相続人の間で定めた割合は相続人の間では有効です。
 したがって債権者にはそれぞれが法定相続分で弁済し、立て替えた相続人はその後、遺産分割協議で最終的に負担することになった相続人に対して支払い請求をすることになります。

固定資産税、住民税、所得税なども「債務控除」の対象
 相続税の課税価格の計算上、債務や葬儀費用は差し引くことができます。これを「債務控除」といいます。
 差し引くことのできる債務は「被相続人が死亡したときにあった債務で確実と認められるもの」とされており、連帯保証債務のように「将来発生するかもしれない債務」は対象になりません。またお墓の購入代金の未払い金のように、非課税財産にかかる債務も控除することはできません。
 債務というと金融機関からの借入金を思い浮かべますが、それだけではなく被相続人の死亡後に納付期限が到来した固定資産税、住民税、所得税なども控除対象になります。
 また、被相続人が入院中に亡くなった場合などは医療費の未払いもあるでしょうから、これも対象になります。所得税法における医療費控除では「支払ったもの」しか認められないので、生前に支払った医療費は所得税の医療費控除、亡くなったあとに支払った医療費は相続税の債務控除、でそれぞれ差し引くことになります。
 よく「分割協議でもめて弁護士費用が莫大にかかったので、それも控除できますか?」という質問も受けますが、これは相続が発生した「後」に生じた費用ですので債務控除できません。
 また、民法では債務について「時効」が定められています。被相続人が抱えていた借金も、すべてが有効ではなく、なかには時効が成立しているケースもありますので、弁護士などの専門家に相談してみるといいでしょう。当然のことですが、時効の成立している債務については債務控除できないので注意が必要です。
 なお債務控除は基本的に日本に居住している相続人に適用されるものですが、外国に居住していても日本国籍を有している一定の人は対象となります。

 アドバイザー/内藤 克 税理士

 ※同コラムは、内藤先生執筆の書籍『
残念な相続』(日本経済新聞出版社)に掲載されています。『残念な相続』の詳細、ご購読はこちら

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