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「領収書1枚」あれば1100万円節税できた!?

2019/03/18

「先生、実は相続税が払えそうもないので親から相続した土地を売却しようと思うんですが」
「うーん。まずは他の方法を考えてみましょう」
「なぜですか?」
「相続税を払うために相続財産を売却した場合は、譲渡にかかる所得税も取られちゃうんですよ」
「えー!? それって二重課税じゃないですか?」

■相続では「権利証なくしても領収書なくすな」
 「相続税」は相続時の価格に対して課税されます。一方、「所得税」は被相続人(例:親など)が購入した金額と相続人(例:子など)が売却した金額の差額(キャピタルゲイン=値上がり益)に対して課税されます。そのため相続税を払う目的で相続財産を売却しても、所得が発生していれば所得税は課税されてしまうのです。
 そしてこの相続財産の売却に際しては、購入時の領収書があるかどうかで手取り額が大きく変わってきます。いい例が不動産で、不動産登記が電子化されつつある今、昔のように「権利証」を大切に保管する必要性は薄れてきました。むしろ大切なのは領収書なのです。
 ではなぜ、領収書がそこまで重要になるのでしょうか。
 不動産の売却を例に説明しますが、まず譲渡所得の計算は、その不動産の所有期間によって異なります。所有期間が5年超(長期)の場合と5年以下(短期)の場合では税率が異なり、短期の譲渡にかかる所得税は、長期譲渡にかかる所得税のなんと約2倍となっています。
 またややこしいことに、所有期間が5年超かどうかの判定は購入日から譲渡日までの期間ではなく、譲渡した年の1月1日現在で判定します。
 「そろそろ大丈夫だろう」とばかり、5年経過したものと勘違いして売却し、確定申告書を作成している最中に短期であることに気づいて「大変だ!」となる方もいらっしゃいますので注意が必要です。譲渡にかかる所得税(住民税含む)は次のように計算します。

 長期譲渡の場合:{譲渡金額 −(取得費+譲渡費用)}×20.315%
 短期譲渡の場合:{譲渡金額 −(取得費+譲渡費用)}×39.63%

 ここでいう取得費は実際にいくらで買ったか(取得価額)とは異なり、減価償却費を加味して計算した金額です。そのため取得価額よりも低い金額となり、利益が出やすい計算になっています。

 問題はここからで、相続で取得した不動産の場合は長い年月が経過しているために、「購入当時の契約書や領収書など、取得価額を示す資料がいくら探しても見当たらない!」というケースがあります。この場合、税務署は譲渡価額のわずか5%しか必要経費として認めてくれません。つまり領収書がないと税金の計算上、きわめて不利なことになるのです。
 Aさん(52歳、会社員)の具体的な例で説明しましょう。
 Aさんの父親は78歳で亡くなりましたが、相続開始の10年前に7000万円で土地建物を購入していました。減価償却を加味したのちの取得費は6000万円になります。そしてこの土地建物を、息子のAさんが相続後4年目に1億円で売却したとします。この場合、

領収書がある場合の税額は(1億円−6000万円)×20.315%=約812万円
領収書がない場合の税額は 1億円×(100%−5%)×20.315%=約1929万円

 仮に領収書がなかったとすると、5%しか必要経費を認めてもらえないため、約1117万円も多く税金を払うことになってしまうのです。

■相続するなら「領収書付き不動産」が理想
 領収書に関しては遺産整理をしているときに不要な書類と勘違いして捨ててしまった場合や、どこにしまってあるかわからない場合などがあるでしょう。
 しかし、本人が生きている間に確認しておけば何かしらの手がかりを得ることができたはずです。たとえば当時の不動産仲介業者に資料がないか確認してもらうとか、建設会社から領収書を再発行してもらうといったことです。
 Aさんのケースで生前に父親に確認して取得時の資料を揃えておけば、極端にいえば領収書の紙1枚で約1100万円もの所得税の節税ができたことになります。
 「過去の資料をあらかじめ整理しておく」ことも広い意味での相続対策です。可能なら、今すぐに「お父さん、この家を買ったときの書類はあるの?」と聞いておきましょう。

 アドバイザー/内藤 克 税理士

 ※同コラムは、内藤先生執筆の書籍『残念な相続』(日本経済新聞出版社)に掲載されています。『残念な相続』の詳細、ご購読はこちら

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