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税理士も間違える!? 「マイナス相続」でも相続税がかかる場合

2019/04/04

「先生、父の相続の件ではお世話になっています」
「こちらこそ」
「ただ、前回打ち合わせした分け方で弟に提示したら、これだと余分な税金が発生するから考え直したいというんですよ」
「え? お父様の相続の場合、財産評価したら財産よりも借入金のほうが大きいのでどんな分け方をしても相続税はかからないはずですよ」
「それが、弟側の税理士が難色を示していまして…」
「うーん、なんでだろう?」

あえて不利な選択をするケース
 今回はめったにお目にかかることのないケースです。プロでも間違えるような話で(私もかつて間違えました)、かつ理不尽な日本の相続税計算の特徴を示すいい例だと思いますので、皆さんがこの落とし穴に落ちないように披露させていただきます。

 相続では「少しでも多く財産をもらいたい」「借入金はなるべく引き継ぎたくない」という相続人同士が主張し合うのが常であり、「僕が借金を多く引き継ぐよ」という奇特な人はなかなかいません。

 しかし、相続税の評価額ベースで計算すると、結果的に「あえて不利な選択」をしているように見えるケースもあるのです。

 遺産分割協議の際には税法上の特例を使って評価を下げた後の金額をベースに話し合うわけではなく、売却可能価額などのいわゆる「時価」をもとに分割案リストを作成します。そのため「時価ベースでの分割案」と「相続税評価額ベースでの分割案」には開きが出ることも少なくありません。

 被相続人が多額の借り入れをして不動産投資を行っていた場合などは、時価ベースではプラスの財産が上回っているのに相続税評価額ベースでは債務超過となり、相続税がかからないこともあります。

 これは相続税を計算する際には時価よりも安い「路線価」や「固定資産税評価額」を用いることと、相続財産の評価額を最大80%も減らせる「小規模宅地等の特例」により、場合によっては大幅な減額が可能だからです。



 このケースに実際の数字を入れて考えてみましょう。相続人は兄と弟の2人ですので基礎控除額は4200万円(3000万円+600万円×2人)です。

 父の生前から兄が不動産経営を手伝っていた関係から、兄の方が不動産とその購入資金である借入金を引き継ぐことになりました。
 ここで時価ベースでそれぞれの相続財産の額を計算してみます。

兄:2億円−1億5000万円=5000万円
弟:7200万円

 2人均等ではなくとも、まずまずの分け方に見えます。
 一方、評価額ベースでは相続財産の額は以下のようになります。

兄:1億2000万円−1億5000万円=▲3000万円
弟:7200万円

 兄はマイナスの財産を引き継ぐことになるので、一見不利に見えます。しかし家賃収入を使って順調に借入金を返済していけば、いずれは都心の一等地に時価2億円の不動産が残ります。弟も莫大な借り入れを引き継いで不動産経営をするより、「すぐお金が欲しい」ということで合意した内容でした。

■「千円未満切り捨て」の深い意味!
 よくある勘違いは「被相続人の相続税財産評価をした結果、全体でゼロになったのだから今回は相続税がかからない」→「そもそもかからないのであればどんな分け方をしたっていいじゃないか」というものでした。しかし、実際は違ったのです。


 相続税法では「各人ごとの課税価格を千円未満は切り捨てた上でそれを合計する」と規定されています。

 ここが最大の問題で、「千円未満切り捨てなんて端数処理の問題じゃないか」とつい思ってしまいますが、この一文をバカにしてはいけません。▲3000万円は千円未満を切り捨てると▲3000万円のままではなく、ゼロになるからです。

 すなわちこの例では「兄の相続額は0円+弟は7200万円=2人合わせた課税価格は7200万円」とされてしまい、相続税が発生することになってしまうのです。
 
 アドバイザー/内藤 克 税理士

 ※同コラムは、内藤先生執筆の書籍『残念な相続』(日本経済新聞出版社)に掲載されています。『残念な相続』の詳細、ご購読はこちら

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