税務の勘所Vital Point of Tax

贈与2日前に15億円の不動産購入 行き過ぎた株特外しに「待った!」

2026/05/27

 株式等保有特定会社とは、その財産に占める株式や出資等(以下、株式等)の割合が50%以上の会社をいう。

 相続税・贈与税の計算上、非公開の株式等保有特定会社が発行した株式は、原則として純資産価額方式またはS1+S2方式で評価されるため、類似業種比準方式による評価額よりも高くなりやすい。そこで、株式等保有特定会社に該当しないように資産構成を変える、いわゆる「株特外し」が行われることがあるが、近年は行き過ぎた「株特外し」が否認されるケースも増えている。
 
 このほど明らかになったのは、資産管理会社A社の代表取締役を務める祖父が、令和2年9月、孫XにA社の株式30株を贈与したところ、税務署から贈与税の増額更正を受け、Xが国税不服審判所(以下、審判所)にその取消しを求めた事例だ(国税不服審判所・令和7年9月5日裁決)。事案の概要は次のとおり。

①A社は、孫Xの父が代表取締役を務める上場会社B社の筆頭株主だった。
②A社は、同社株式の贈与の2日前に約15億円の賃貸不動産をB社から購入し、「株特外し」を実行した。
③不動産購入に際し、金融機関から13億円、父から2億8千万円の借入れを行った。
④贈与税の計算では、A社株式を取引相場のない株式として、純資産価額方式と類似業種比準方式の併用方式で株価を評価して申告した。
⑤所轄税務署は令和5年9月に税務調査に入り、翌年6月、評価通達189のなお書きを適用し、贈与直前に行われたA社による不動産購入には合理性はなく、資産構成を操作したものとしてA社を株式等保有特定会社と認定。S1+S2方式により株価を再評価の上、贈与税を増額更正した。

 裁決のポイントとなったのは、評価通達189のなお書きだ。これは、評価会社が株式等保有特定会社に該当するか否かを判定するに当たり、課税時期前に合理的な理由もなく資産構成の変動があり、それが株式等保有特定会社に該当することを免れるためのものと認められる場合には、その変動をなかったものとして判定する取扱いである。今回の争いは、このなお書きの適用が争点となった(ほかの争点は割愛)。

 審判所は、なお書きについては、資産構成の変動操作で時価がゆがめられるようなケースにも対処する必要があるとした。その上で、次のような事実を指摘した。

(1)贈与者は節税の提案を受けてA社による不動産の購入およびA社株式の贈与を決断し、贈与の2日前に不動産の取得・借入れが行われている。
(2)A社が不動産の購入代金の全額を外部から資金調達したのは、9億円を超える現金預金残高を減少させず、総資産価額を増加させることで株式等保有割合を50%未満にするためであった。
(3)その結果、A社の株式等保有割合が贈与日の直前に50%以上から50%未満に変動した。
(4)これらの一連の行為は、A社が株式等保有特定会社と判定されることを回避するための総資産価額の操作に当たる。

 これらの事実を踏まえ、審判所はA社が株式等保有特定会社に該当すると判断した。Xは「不動産は、A社が賃貸事業の拡大を求めて購入したもの。取得原資を借入金としたのは、現金預金は不測の事態等の資金として留保するもので合理的理由がある」と主張したが、認められなかった。

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