和解金は相続財産か? 遺留分減殺請求の価額弁償金に当たるかが争点に
2026/01/16
請求人(長女)の父Aが平成28年6月に死亡し、相続が開始した。法定相続人は請求人と、請求人の兄Eの2名である。

Aは平成25年10月1日付けで、Eと請求人に等分にて財産を相続させる旨の自筆証書遺言をしていた。しかし、その後に作成された平成26年4月2日付の遺言公正証書(L法務局所属公証人作成)には、従前の遺言をすべて撤回し、Aが所有する一切の財産をEに相続させる旨が記載されていた。
これを知った請求人は、Eを被告としてN地方裁判所に訴訟を提起した。主位的には公正証書遺言は無効であるとして法定相続分に応じてAの財産の相続を求め、予備的には、仮に本件公正証書遺言が有効であるとしても、遺留分減殺請求権を前提とした請求を行うとともに、有価証券等の財産がAの遺産であることの確認を求めた。請求内容は概ね次のとおり。
⑴EがAおよび母K名義の預金を無断で引き出した上、Aの意思に基づかずEの子に教育資金贈与を行ったとして、不法行為による損害賠償請求権または不当利得返還請求権に基づく支払請求。主位的に約1082万円、予備的に約643万円。
⑵A死亡後に行われたAからEへの不動産の所有権移転登記について、共有持分権に基づき、主位的に請求人およびEの持分を各2分の1ずつとする更正登記手続請求、予備的に請求人の持分を4分の1、Eの持分を4分の3とする更正登記手続請求。
その後、裁判所は令和3年11月30日、請求人の代理人Q弁護士およびEの代理人R弁護士に対し、和解案の金額として○○○○円を提示した。Q弁護士は同年12月4日、和解案を和解検討用試算表とともに請求人に電子メールで報告。令和4年3月、請求人とEとの間で訴訟上の和解が成立した。
これを受け、原処分庁の調査担当職員は令和4年8月25日、請求人に対して相続税の調査を開始。そして令和5年7月7日付で、上記和解に基づきEから請求人に支払われた「本件解決金」について、その全額がAの相続財産に対する遺留分減殺請求に基づく価額弁償金に該当するとして更正処分を行った。請求人は、これを不服として令和5年9月28日に審査請求をした。争点は、本件金員は、請求人のEに対する遺留分減殺請求に基づく価額弁償金に該当するか否か。
請求人は、更正処分において課税価格に算入された金額は、遺留分減殺請求に基づく価額弁償金を超過する金額であって、損害賠償金に該当するものであるから相続税の課税価格に算入されないなどと主張。
一方、原処分庁は、Eから請求人に対して支払われた解決金について、①本件訴訟における双方の代理人弁護士の認識、②請求人が予備的主張として遺留分減殺請求に基づく価額弁償を請求していたこと、③和解後にEが本件解決金の全額が請求人の個別的遺留分であることを前提として行動していたこと――、などから解決金は遺留分減殺請求に基づく価額弁償金であって、その全額が請求人の相続税の課税価格に算入されるとした。これに対して審判所は、①和解調書には、本件解決金が遺留分減殺請求に基づく価額弁償金であることを示す記載がない、②双方の代理人弁護士のいずれの申述内容も、本件解決金の全額が遺留分減殺請求に基づく価額弁償金であるとするものではなく、担当裁判官の心証も不明、③当該訴訟では、主位的には公正証書遺言の無効を主張しており、予備的な主張を根拠にして本件解決金の性質を判断することはできない、④E自身も和解当時、本件解決金には遅延利息が含まれていると認識していたと考えられる――などからすると、本件解決金は、その全額が遺留分減殺請求に基づく価額弁償金であると認めるに足りる客観的な証拠はなく、価額弁償金以外の法的性質を有する金が含まれていたことを否定できない。したがって、原処分庁の主張には理由がないと判断。原処分庁の処分を全部取り消した。(令和6年7月3日裁決)
