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スキルアップ税務

社長貸付金・社長借入金消去の税務 ~証拠の論点も踏まえて~⑫

2023/09/20

2)
同族法人間での金銭消費貸借契約も上記と同様です。疎明力を高めるため元本返済、利息の授受について通帳間で行うことを徹底します。同族法人間での合理的な再建計画に基づく無利息貸付の場合、子法人がいかなる事業計画(将来キャッシュフロー計算書の整理)をしているかを疎明する必要があります。具体的には子法人において事業計画書のベスト、ニュートラル、ワーストのそれぞれのシナリオを用意し、
・支援した場合、ワーストシナリオでも子法人は再生できる
・支援しない場合、ベストシナリオでも子法人は自力再生できないことを明確にします。

上記を踏まえると下記のような雛形が考えられます(法基通9-4-1)。

稟議書(子会社(関連会社)財務健全化計画)
令和●年●月●日

下記の件につき、ご承認いただきたい。

1.当社と●社の関係について
 当社と子会社●社の間には完全支配関係
 (※注:●%支配関係、●%議決権等々内訳明記)がある。

2.●社の財政状態等 ★1
●社
・過去5年程度~当社において損金計上するまでの間1年ごと
・借入金
・純資産価額
・EBITDA 等々

3.●社に対して損失負担を行う「相当な理由」

当社の収益性は、●社の影響により、大幅に悪化していることは明らかである。

当社は、収益性を改善させるため、●社に対し一時的に多額の損失負担をすることにより●●部門から撤退することによって、将来、当社で生じ得る可能性がある、より大きな損失の負担を回避することができると見込まれる。

さらに、当社は、●●部門から撤退するに際して、●社の財政状態を改善した上、●社への売却(M&A)を実行することのほうが、●社を解散・清算するよりも、当社の損失負担額が少なくなることが明らかとなっている。(※注:別途検証エビデンスが必要のため、カットしても可能)

したがって、●社の将来の売却(M&A)を志向するにあたり、●社に対する貸付債権残額●億円の債権放棄をして損失負担を行うこととする。具体的には、当社は、当期末(令和●年●月期)に、●社に対する貸付債権●億円を子会社に対する損失負担として損金処理する。

そうすることで、●社の財政状態を改善する。そして、翌期末(令和●年●月期)までにおいて、●社についてその全株式を売却することとする。

この方策は、経済合理性のある経営戦略上、最善である。この点につき、当社が今回の子会社整理に伴う●億円の損失負担を行うことに相当な理由があるといえる。

★1 ここで、
「子法人において事業計画書のベスト、ニュートラル、ワーストのそれぞれのシナリオを用意し、
・支援した場合、ワーストシナリオでも子法人は再生できる
・支援しない場合、ベストシナリオでも子法人は自力再生できないこと」を意識している事業計画書、将来キャッシュフロー計算書を記載します。

取締役会議事録

議案 ●社に対する損失負担の決議

当社の収益性は、●社の存在が原因で大幅に悪化しており、当社は、収益性を改善させるために、●社に対して一時的に多額の損失負担をして●●部門から撤退することで、将来的に当社で生じ得る可能性のある、より大きな損失の負担を回避することができる。

さらに、当社は、●●部門から撤退するに際して、●社の財政状態を改善した上でM&Aしたほうが、●社を解散・清算するよりも、当社の損失負担額が少ないことが明らかとなったことから、●社に対する貸付債権残額●億円について債権放棄による損失負担を行う。

具体的な手続は、稟議書((子会社財務健全化計画)「3子会社に対して損失負担を行う相当な理由」)のとおりであり、●社に対して損失負担をすることには相当な理由がある。

これらを踏まえ、●社に対して損失負担を実行することについて決議を行う。★1

★1 上記のとおり、ここでも、
「子法人において事業計画書のベスト、ニュートラル、ワーストのそれぞれのシナリオを用意し、
・支援した場合、ワーストシナリオでも子法人は再生できる
・支援しない場合、ベストシナリオでも子法人は自力再生できないこと」を意識している事業計画書、将来キャッシュフロー計算書を記載しても問題ありません。

なお、上述までの法人間に係る論点については、グループ法人税制適用下では、特段留意しないこともあります。

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