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スキルアップ税務

社長貸付金・社長借入金消去の税務 ~証拠の論点も踏まえて~➀

2023/03/01

 オーナーや同側特殊関係者からの貸付、すなわち法人にとっては役員借入金(貸方)に計上されている金額について消去の手法について生前対策で考えられる事項は下記が代表的です。

⑴ オーナーが会社に対し債権放棄する(会社にとっては債務免除)
⑵ DES
⑶ 擬似DES
⑷  役員給与減額、減額分で徐々に精算(タイミングが合えば役員退職金との相殺)
⑸ 代物弁済等
⑹ 第二会社方式
⑺ 貸付金を親族へ贈与
⑻ 受益権分離型プランニングによる圧縮後の元本受益権の贈与
⑼ 持分会社移行による貸付金減額プランニング

 課税実務では、「オーナーが会社に対し債権放棄する(会社にとっては債務免除)」と「役員給与減額⇒減額分で徐々に精算」を併用する方法が一般的です。しかし、一気に解消したい場合、DES や擬似DES を選択します。なお保険を活用したプランニング(保険料を代物弁済するプランニング、ハーフタックス活⽤したプランニング等々)もありますが、税務上は疑義が生じる論点が非常に多くあるため本稿では意図的に触れません。

 下記では上記の代表的な手法を順番に見ていきます。

 「オーナーが会社に対し債権放棄する(会社にとっては債務免除)」について税務上の留意点については税効果という側面では不得手な場合もありますが、課税実務では結論が明確になっていることから、すなわち課税関係の簡潔さという面で非常に多く用いられます。相続まで時間がある場合、これと上掲「⑷ 役員給与減額、減額分で徐々に精算」を併用すれば特段問題は生じません。

(STEP 1)  貸付金放棄⇒会社では債務免除益という益金が計上されます。したがって、通常、繰越欠損金や法人所得圧縮策がある場合に実行します。
(STEP 2)  株価評価上昇⇒相続税法第9 条より、みなし贈与課税発生が生じます。債権放棄者から既存株主への贈与です。

相続税法第9 条
 第5 条から前条まで及び次節に規定する場合を除くほか、対価を支払わないで、又は著しく低い価額の対価で利益を受けた場合においては、当該利益を受けた時において、当該利益を受けた者が、当該利益を受けた時における当該利益の価額に相当する金額(対価の支払があった場合には、その価額を控除した金額)を当該利益を受けさせた者から贈与(当該行為が遺言によりなされた場合には、遺贈)により取得したものとみなす。ただし、当該行為が、当該利益を受ける者が資力を喪失して債務を弁済することが困難である場合において、その者の扶養義務者から当該債務の弁済に充てるためになされたものであるときは、その贈与又は遺贈により取得したものとみなされた金額のうちその債務を弁済することが困難である部分の金額については、この限りでない。

相続税法基本通達9-2
(株式又は出資の価額が増加した場合)
 同族会社(法人税法(昭和40年法律第34号)第2 条第10号に規定する同族会社をいう。以下同じ。)の株式又は出資の価額が、例えば、次に掲げる場合に該当して増加したときにおいては、その株主又は社員が当該株式又は出資の価額のうち増加した部分に相当する金額を、それぞれ次に掲げる者から贈与によって取得したものとして取り扱うものとする。この場合における贈与による財産の取得の時期は、財産の提供があった時、債務の免除があった時又は財産の譲渡があった時によるものとする。

⑴ 会社に対し無償で財産の提供があった場合 当該財産を提供した者
⑵ 時価より著しく低い価額で現物出資があった場合 当該現物出資をした者
⑶ 対価を受けないで会社の債務の免除、引受け又は弁済があった場合 当該債務の免除、引受け又は弁済をした者
⑷ 会社に対し時価より著しく低い価額の対価で財産の譲渡をした場合 当該財産の譲渡をした者

 なお「(STEP 1)貸付金放棄⇒会社では債務免除益という益金が計上されます。したがって、通常、繰越欠損金や法人所得圧縮策がある場合に実行」してもなお、役員借入金がある場合、⑷役員給与減額、減額分で徐々に精算だけを続けていく場合、もしくは当該残額分については上掲⑵DES もしくは⑶擬似DES を実行する場合もあります。

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