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社長貸付金・社長借入金消去の税務 ~証拠の論点も踏まえて~⑩

2023/07/19

2)
 
所得税法では、「給与等」の支払をする者は、その支払の際、その給与等について所得税を徴収しなければならない(所得税法183条)、とあります。一方、「報酬」の場合は、限られたもののみが、源泉徴収の対象(所得税法204条)となります。報酬源泉に関しては限定列挙になりますので国税庁公表の「源泉徴収のあらまし」を文理で当てはめて問題ありません。類推の余地は一切ありません。

 「給与等」と「報酬」の違いとして、「雇用契約又はこれに類する原因にもとづき使用者の指揮命令に服して提供した労務の対価として使用者から受け取る給付をいい、とりわけ、給与支給者との関係において何らかの空間的、時間的拘束を受け、継続的ないし断続的に労務又は役務の提供があり、その対価として支給されるものであること」(最高裁昭56. 4.24)が一義的な判断基準となります。それを前提に契約書を作成します。契約の内容は当事者の合意した内容です。雇用契約の場合、それは契約書と就業規則に記載された内容といえます。

 ここで問題となるのが契約書の記載だけでは意味がなく契約書の記載と実態が乖離するときは、真実性に疑義が生じる点です。しかし、税務調査時点では、争点のスタートは契約書から入りますので、そもそも契約書の記載からして不十分なときは、問題外になってしまいます。

 次に当該契約書と実態の乖離チェックに入ります。例えば、

○業務時間の指定、時間的拘束について
→(証拠)
・契約書
・就業規則
・タイムカード(社内勤怠管理ツールも当然含む)、等々

○業務場所の限定、場所的拘束について
→(証拠)
・契約書・就業規則
・オンラインミーティングログ、等々

○雇用主体の論点について、募集・採用の決定、指揮命令
→(証拠)
・募集広告の主体
・履歴書の管理場所
となります。

 下記の有名な国税情報です。なお、調査官によっては下記の判定検討表の存在自体知らない方もいます。これが論点になった場合、まずは下記の国税情報を知っていて指摘項目としているかを確認すべきです。指摘された各人ごとに下記の判定検討表にあてはめ、調査時の抗弁材料とすることができます。

〇給与所得と事業所得との区分 給与?それとも外注費?
 法人課税課速報H150700-28  法個通 法人課税課速報(源泉所得税関係) 東京国税局 平成15年7月 第28号(一部抜粋)

3 実務上の判定方法

 給与所得か事業所得かは、前記「2」の考え方によって区分されますが、実務上は、次に掲げる事項を総合勘案して判断することとしています。

① 契約の内容が他人の代替を受け入れるかどうか
 一般に雇用契約に基づく給与の場合、雇用された人は自分自身が仕事をしたことにより、その役務の対価を受け取ることができます。
 一方、請負契約に基づく事業所得の場合、依頼主との間で仕事の期限、代金等を決定すれば、実際の仕事を行う者は必ずしも請け負った者自身に限らず、自己が雇用する者その他の第三者にまかせることができ、期限までに完成させて納品すれば、決められた代金を受け取ることができます。
 このように給与所得の場合は他人の代替ができませんが、事業所得の場合は他人の代替ができるという違いがあります。

② 仕事の遂行に当たり個々の作業について指揮監督を受けるかどうか
 雇用契約の場合、雇用主が定める就業規則に従わなければならず、作業現場には監督がいて、個々の作業について指揮命令をするのが一般的です。一方、請負契約の場合、仕事の期限さえ守れば途中における進行度合いや手順等について、依頼主から特に指図を受けることがないのが通常です。

③ まだ引渡しを終わっていない完成品が不可抗力により滅失した場合において、その者が権利として報酬の請求をなすことができるかどうか
 請負契約の場合、引渡しを終えていない完成品が、例えば火災等により滅失して期限までに依頼主に納品できない場合には、対価の支払を受けることができません。
 しかし、雇用契約の場合、労務の提供さえすれば当然の権利として対価の請求をすることができます。

④ 材料が提供されているかどうか
 雇用契約の場合は雇用主が材料を所得者に支給しますが、請負契約の場合は所得者が材料を自分で用意するのが一般的です。

⑤ 作業用具が提供されているかどうか
 雇用契約の場合は雇用主が作業用具を所得者に供与しますが、請負契約の場合は所得者が自分で用意するのが一般的です。

 以上の判断項目に基づいた判定方法を図解すると次のとおりとなりますが、最終的には事例に応じて詳細かつ具体的な事実を把握、収集し、総合勘案して判定する必要があります。

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