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スキルアップ税務

社長貸付金・社長借入金消去の税務 ~証拠の論点も踏まえて~㉒

2024/03/19

1)

 間接事実による課税要件事実の推認は常にその推認が覆される可能性があるとすると、課税要件事実につき、原則として立証責任(訴訟において、事実があるかどうか認定できない場合、いずれか一方の当事者が負う不利益又は負担のことをいいます。課税要件事実の立証責任は課税庁にあります。

 損金や必要経費についても、原則として、課税庁の認定した金額を超える金額を基礎付ける具体的事実が存在しないことの立証責任が課税庁にあるとされます。

 ただし、例外として、簿外経費のほか、資産の評価損、利息、貸倒損失など、納税者に有利な項目については、過去の裁判例で納税者に立証責任が転換されることがあります。本書では該当箇所について適宜触れていきます。)を負う課税庁(国)としては、どのような点に注意して間接事実を立証すればいいのでしょうか。

 裁判所が、納税者の主張する業務の実体は存在したとはいえないと判断した裁判例(東京地裁平成20年6月12日判決)を見てみましょう。

<事件の概要>
 争点は、S社からP社に対して支払われたソフトウェアの不具合対応業務に係る外注費(8,977万円)が寄附金を仮装したものであるか否かである。
(中略)

<裁判所の判断>
⑴ 不具合対応業務に係る外注費の額は、不具合対応業務の現実の作業実績に基づいて試算、決定されたのではなく、むしろ、専らP社グループ全体としての利益調整という観点から試算し、決定されたということができる。
⑵ S社にとって、売上げの大半を占める本件得意先は最も重要な取引先であり、巨額の対価をもって契約された本件のシステム開発に関する不具合対応業務は、P社において極めて重大な関心事のはずであって、真にP社の主張するような不具合対応業務が行われていたとすれば、技術担当の取締役から詳細な経過報告がされることはもとより、経営会議の議事録等にも当然に記載されるべき事柄であると考えられるにもかかわらず、それらの事実が全く見受けられないというのは、通常考え難い状況であるといわざるを得ない。
⑶ P社から提出された不具合対応業務の作業実績が多数記載されている「作業実績調査結果」は、不具合対応業務を仮装するために作出された資料であるというほかなく、内容についておよそ信用するに足りないといわざるを得ない。

 このように裁判所は判断しました。これにつき裁判所の判断過程における証拠の重要性がわかります。

<判断過程>
 裁判所は、経営会議において、
① P社の経常利益は赤字が予測されていたこと
② S社の利益を外注費としてP社に振り替えることが決定されていたこと
③ P社の資金不足が懸念されていたこと
④ P社グループ全体の法人税が減少するよう外注費の額を繰り返し試算していたことなどから、P社の決算を黒字にするためにS社の利益を外注費としてP社に振り替えることが決定されたと認定しました(経営会議資料、決算予測資料及び経営管理担当役員ノートなどにより認定(※下線筆者))。
⑤ 経営会議はP社グループの経営に関する重要な事項を決定する会議であること
⑥ 本件得意先に対する売上げはS社の売上げの90%以上であること
⑦ 不具合対応業務の進捗状況等は経営会議に報告されていないことなどから、P社グループの経営に関し重要な事項を決定する経営会議において巨額の費用を要する不具合対応業務に関する報告がないという状況は、当該業務が行われていたとすれば、通常考え難い状況であるとした上で(経営会議資料などにより認定(※下線筆者))、これらのこと(上記①ないし⑦)からすれば、不具合対応業務が現実に行われたことを推測させる事実は認められないと判断しました。
そして、さらに、不具合対応業務の作業実績が記載された資料について、
⑧ 不具合が生じたとされるシステムは開発中止になっていること
⑨ 不具合対応業務に従事したとされる従業員は、当該業務に従事するだけの技術的能力を有していないか、他の業務に従事していたこと

 などから、当該資料の記載内容は信用できず、従業員が当該業務に従事したとは認められないとした上で(従業員の勤務報告、労務管理に関する稟議書及び元従業員の聴取書などにより認定(※下線筆者))、以上のこと(上記①ないし⑨)からすれば、不具合対応業務の実体は存在したとはいえないと判断しました。

 重要なのは筆者が下線を付した箇所です。これらについて社会通念(=常識)で当然あるべきはずの資料が存在していない(エビデンスとしては弱かった)ということがわかります。同族特殊関係者間の取引はすべて純然たる第三者と同様の取引をしたときと同等以上のエビデンスがなければ疎明力はないものとされます。

 当局資料では、締めくくりに下記のように述べています。

 このような判断過程からすると、裁判所は、課税庁(国)及び納税者の主張をそれぞれ前提とした場合、証拠から積み上げた間接事実等を統一的、整合的に説明できるか、という観点から検討しているということが分かります。 
 この後、当局資料ではいわゆる社会通念(=常識)で証拠について検証していくとしています。

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