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スキルアップ税務

社長貸付金・社長借入金消去の税務 ~証拠の論点も踏まえて~㉙

2024/06/13

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重要情報1

〇その他行政文書 調査に生かす判決情報078 

 情報 調査に生かす判決情報第78号 平成29年6月 証拠収集の重要性-課税処分取消訴訟の立証責任は国側が負う-東京地裁平成15年5月15日判決(国側一部敗訴・相手側控訴)東京高裁平成16年3月30日判決(原審維持・確定) 東京国税局課税第一部国税訟務官室

▼ 裁判所による事実認定は、証拠がなければ認定されない
(課税処分取消訴訟における立証責任(挙証責任)の所在)

〇 一般に、課税処分取消訴訟における立証責任(挙証責任)は、原則として国側にあり、立証するための証拠がない場合には裁判所の事実認定が得られない可能性が高い。したがって、調査先からの証拠の収集が困難である場合には、速やかに反面調査等の補完調査を行って可能な限り証拠を収集することが必要である。

〇 本件は、X(附属病院などを経営する学校法人)が製薬会社等の委託に基づいて治験等(治験、委託研究等)を実施し、それに起因して受領した寄附金名目の金員(以下「本件寄附金」という。)が、収益事業(請負業)に係る収人に該当するか否かが争点となった事件である。

 本件寄附金について、Y(課税庁)が治験等の対価(収入金額の計上漏れ)に当たると主張した金額のうち、証拠上、治験等に係る役務提供の対価として支払われたことが認められる約6割の金額については、収益事業に係る収入に該当するとされたものの、残余の約4割の金額については個々の寄附金の内容の立証が不足しているとして、Yの主張が排斥された。

〇 本件は、原処分調査において、調査資料の収集についてXの調査協力が得られなかったなどの諸事情があったことから、証拠資料の収集が不十分であった事案であり、税務訴訟における証拠の重要性を示す典型的な裁判例といえる。(※下線筆者)」

(筆者中略)

<調査に役立つ基礎知識>

〇 立証責任(挙証責任)の意義 
 事実が存否不明のときには、原則として、存否不明の事実は存在しないものと扱いその事実を要件とする法律効果の発生を認めない裁判をするように命じるものである。これを当事者からみると、ある事実が存否不明であるときには、いずれか一方の当事者が、その事実を要件とした自分に有利な法律効果の発生が認められないことになるという不利益を負わされている。このような当事者に及ぼす危険又は不利益を立証責任(挙証責任)という。

〇 課税処分取消訴訟における立証責任(挙証責任)
⑴ 課税処分取消訴訟は、課税処分の適否について争われるから、主要事実(課税処分の根拠となる事実)の存否についての立証責任(挙証責任)は、原則として国側が負うことになる。したがって、国側は、主要事実を裁判所に認定される程度の証拠を提出する必要がある。
 この点については、最高裁判所昭和38年3月3日第三小法廷判決(訟務月報9巻5号668ページ)において、「所得の存在及びその金額について決定庁が立証責任を負うことはいうまでもないところである。」と判示されており、多くの裁判例や学説も、原則として国側に立証責任(挙証責任)があるものと解している。
⑵ これに対して、相手側(納税者)は、国側が主張する主要事実を否認する証拠(反証)を提出し、これにより裁判所の心証を、その主要事実が存在するとも存在しないとも分からない程度の状態に至らせば、上記のとおり、立証責任(挙証責任)の原則により、当該課税処分の根拠となる事実が存在しないことになってしまう。
(筆者中略)

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