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スキルアップ税務

社長貸付金・社長借入金消去の税務 ~証拠の論点も踏まえて~㊷

2025/02/26

1)

(2) 本件債権が評価通達205に該当するか否かについて(争点2)

 オーナー貸付金(会社決算報告書においては役員借入金等々)に関しては財産評価基本通達205項を参照してください。(貸付金債権等の元本価額の範囲)
 205前項の定めにより貸付金債権等の評価を行う場合において、その債権金額の全部又は一部が、課税時期において次に掲げる金額に該当するときその他その回収が不可能又は著しく困難であると見込まれるときにおいては、それらの金額は元本の価額に算入しない。

〇納税者側の主張

 本件会社は、少なくとも平成19年以降現在に至るまで、常に債務超過の状態にあり、また、本件相続開始日の前後において継続的に損失が生じていた。このような事情を踏まえると、本件会社から本件債権を回収できないことは明らかでるから、本件債権の評価額は、評価通達205の適用により零である。

〔主な証拠(根拠)〕
平成19年から平成25年までの決算書ほか国側の主張

 本件会社は、本件相続開始日を含む事業年度以前の7事業年度において、平均して約1,905万円の売上高を計上するとともに、金融機関から新たな融資を受けていたという状況にあったのであるから、本件会社が経済的に破綻していたなどとは到底いえず、本件債権は、評価通達205の適用がない。また、本件会社が債務超過にありながらも長年にわたって事業を継続していることは、本件会社が経済的に破綻していることが客観的に明白であるとは認められないことを裏付けるものである。

〔主な証拠(根拠)〕

イ 昭和46年から平成25年までの決算書

ロ 上記イを基に本件会社の純資産及び純損益の金額の推移をまとめた調査報告書

ハ 預貯金

(1) 債務者について次に掲げる事実が発生している場合におけるその債務者に対して有する貸付金債権等の金額(その金額のうち、質権及び抵当権によって担保されている部分の金額を除く。)

(中略)

ヘ 業況不振のため又はその営む事業について重大な損失を受けたため、その事業を廃止し又は6か月以上休業しているときを検討することが多いです。しかし、本件に限らず納税者主張が認められる可能性はほぼありません。当局は上掲の通り、

〔主な証拠(根拠)〕

イ 昭和46年から平成25年までの決算書

ロ 上記イを基に本件会社の純資産及び純損益の金額の推移をまとめた調査報告書

ハ 預貯金等照会回答書を踏まえた上で破綻していない、と主張します。多くの中小企業が何かしらの方法(自転車操業等々)で存続している限り、上掲証拠を持ちだされると納税者は決定的な反論ができません。

〇裁判所の判断等

1 争点1に対する裁判所の判断過程

(1)相続税法22条の「時価」を評価通達により評価することの合理性

1 中略

2 中略

3 評価通達の内容自体が財産の「時価」を算定する上での一般的な合理性を有していると認められる限りは、同通達の定める評価方法に従って算定された財産の評価額をもって、相続税法上の「時価」であると事実上推認することができるものと解され、同通達に定める方法によっては財産の時価を適切に評価することのできない特別の事情のない限り、同通達に定める方法によって相続財産を評価することには合理性があるというべきである。

(2) 貸付金債権を評価通達204及び同通達205により評価することの合理性

 貸付金債権については、債務の内容が金銭の支払という抽象的な内容であり、通常は元本及び利息の金額を一義的に定めることができるものである一方、市場性がなく、取引相場のように交換価値を具体的に示すものではないから、評価通達204が、原則として、貸付金の価額を元本の金額と既経過利息との合計額で評価すると規定して、同通達205が、例外として、債務者が手形交換所において取引停止処分を受けたとき等、債権金額の全額又は一部の回収が不可能又は著しく困難であると見込まれるときに限り、それらの金額を元本の価額に算入しないとしているのは、貸付金債権の上記性質に照らして合理的なものということができる(貸し倒れリスクを何らかの方法で評価して減額することは、その客観的かつ適切に評価する方法を見出し難い上、上記の貸付金債権の性質からすると採用することができない。)。

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