生命保険契約の契約者変更に関する誤解
2026/04/28
確定申告の時期には、納税者から生命保険契約について、様々なご質問をいただきます。中でも生命保険の契約者変更については、今でも多くのご質問をいただきます。税理士ならば保険料負担者で課税関係を考えるので間違わないと思うのですが、一般の方は保険契約者で考えることが多いので、契約者変更さえすれば課税関係は最終契約者のみで判断すればよいとお考えになる方がまだいらっしゃるのです。
生命保険に関する課税関係は、たとえ保険契約者を変更したとしても、実際の保険料負担者と受取人との関係で判断するのが原則です。その場合、実際に負担した保険料の割合で保険金や解約返戻金の額を按分して課税関係を判断します。平成27年度の税制改正で、調書を見れば、変更の事実がある程度、わかるようになっています。
1,平成27年度の支払調書等に関する税制改正
平成27年度税制改正により、生命保険契約の調書に関する大きく2つの変更が行われました。
(1)平成30年1月1日以後の契約者変更につき、一時金や年金の支払調書(一時金は100万円超、年金は年20万円超)に以下の3項目を追加
①直前の契約者名 ②契約者変更の回数 ③現在の契約者の支払保険料の額
この追加により、減額払戻金も含めて一時金や年金を受け取った場合の課税関係が少し明確になりました。
(2)契約者死亡による「保険契約者等の異動に関する調書」が新たに発行(解約返戻金相当額が100万円超)され、相続税申告に必要な解約返戻金相当額を記載
この発行により、相続税申告に必要な生命保険契約の権利の評価額である解約返戻金相当額が調書の形で明確になりました。
2,契約者生存中の契約者変更
よく質問されるのですが、「生前に契約者変更するとその時点で贈与税が課税されるのではありませんか?」と。
これに対しては、国税庁HP質疑応答事例「生命保険契約について契約者変更があった場合」に記載の通り、変更時点では課税関係は発生しません。後日、保険金受取や解約などの保険事故発生時に、保険料負担者と受取人との関係で、課税関係を判断します。そもそも担税力に問題があるからだと思います。
この場合、保険金額等を保険料負担割合で按分して判断するのですが、保険料負担者が離婚により変更されて一部が贈与となる場合に問題が生じ勝ちです。
3,契約者死亡による契約者変更
保険金支払とならない契約者死亡の場合、生命保険契約に関する権利は解約返戻金の額(評基通214)で相続税課税(相基通3-36(1))されます。以降、被相続人である前契約者の支払った保険料は相続人である新契約者が支払ったものとされます(相法3②、5③)。この権利は本来の相続財産として遺産分割の対象となります。また、この権利の相続は実際に相続税を支払ったかは関係ありません。なお、この後に解約があった場合、前契約者の支払った保険料と新契約者の支払った保険料の合計額を必要経費として一時所得を計算します。
また、契約者変更後に前の保険料負担者が死亡する場合もあります。この場合、解約返戻金の額で被保険者がみなし相続(相法3①三)します。以降、被相続人である前契約者の支払った保険料は相続人である新契約者が支払ったものとされます(相基通3-35)。この権利はみなし相続財産なので遺産分割の対象外です。また、この権利の相続は実際に相続税を支払ったかは関係ありません。ただし、調書が発行されないので、相続税申告において漏れる可能性が高いです。
4,まとめ
調書の変更により、だいぶん、契約者変更の事実が明らかになりましたが、まだまだ不十分です。平成29年12月31日までの契約者変更は反映されていません、また、法人個人間の契約者変更や2回以上の契約者変更も調書だけではよくわかりません。
特に難しいと思うのは、「保険料負担者で判断するのはわかったけど、契約者変更した後も保険料はずっと自分が負担していた」という納税者の主張をどう申告に反映するかです。保険会社が保険料負担者でなく契約者で調書のデータ管理をしている以上、多くの場合に保険料支払事実を預金通帳で証明するのが困難な場合が多いのです。その場合は、最終的に、調書で判断するしかないのではと思われます。
解説/追中 徳久 税理士
