税理士業務に役立つ保険ナレッジ

生命保険料控除は誰が利用できますか?/追中徳久税理士

2026/03/17

 確定申告シーズンが終了しました。税理士会は、毎年、所得税等の申告期限を延長してほしいと課税庁に働きかけてきましたが、地方税との関係があるのか、なかなか実現していません。スマホを使った申告が普及する中、税理士が携わる確定申告自体は減少していると思われますが、それでもお客様は判断に迷うことがあるのか、ご質問をそれなりにいただきました。

 そのうち、多くのご質問をいただいた生命保険料控除に関して、整理してみたいと思います。

1,生命保険料控除を利用できる人は?

 保険法は、保険契約者を保険契約の当事者のうち、保険料を支払う義務を負う者としています(保険法第2項第3号)。ただ、実務において、契約者と保険料負担者が異なることはよくあります。また、保険契約者や保険料負担者が変更されることもよくあります。

 そして、課税関係においては、契約者より保険料負担者が重要なのですが、生命保険料控除(所法76、120、所令262)はこの保険料負担者しか利用することができません。保険料を実際に支払った者だけが、この所得控除を利用することができます(平成11年3月18日裁決参照)。

 例えば、妻が契約者である生命保険契約において夫が保険料を支払っている場合、夫が支払った保険料は夫の生命保険料控除の対象となります。そして、将来、保険金や解約返戻金を受け取ることになった場合、保険料を支払った夫と受取人との関係で課税関係を判断します。契約者と受取人との関係ではありません。そして、保険料を払う都度に課税を判断するのではなく、実際にお金が動いた時点で判断します。

 また、生命保険料控除を利用するには、保険金の受取人のすべてをその保険料の払込みをする者又はその配偶者その他の親族(6親等内の血族と3親等内の姻族)としなければなりません。ここでいう配偶者は民法上の配偶者なので、離婚した元配偶者や内縁の配偶者は含まれません。

 なお、年度途中に解約した場合、解約日までに実際に支払った保険料のみが控除の対象になります。

 最近ご質問が増えたのは、非居住者の生命保険料控除です。生命保険料控除は居住者が条件なので、非居住者は生命保険料控除の対象外です。

2,カード払いと保険料引去り口座

 こんなご質問をいただきました。「保険契約者は自分で、自分のカードで支払っています。ただ、銀行の引去口座は配偶者である夫の名義です。これは自分の生命保険料控除でよいですよね。ここまで、税務署は調べませんよね?」

 お答えは、「保険料負担者は引去口座の名義人であるお客さまの配偶者と推定されます。事実が異なるのなら、その証明を税務署から求められる可能性があります。

 また、おっしゃるとおり、なかなか税務署も発見できないかもしれません。しかし、相続税の税務調査の過程で預金通帳を精査している場合に発見されることもあります。見つからないとは言いきれないと思います。」。

3,まとめ

 生命保険料控除に関しては、誰が実際に生命保険料を支払ってきたかをご確認ください。途中で生命保険料負担者が変更されたら、実際に支払った保険料だけが、その方の生命保険料控除の対象になります。税務署は支払調書以外のことは調べないから大丈夫とは言えません。

 また、上記の事例において、毎年の生命保険料控除を夫が利用していたのに、保険金受取りの場面になって妻が保険料負担者だと主張することもできません。

 なお、特に注意しないといけないのは、個人年金で契約者と保険料負担者が異なる場合で、かつ、保険料負担者と年金受取人が異なる場合です。この場合は年金開始時に相続税法第24条評価額(確定年金の場合は、通常、一時金の額)で贈与税が課税されるのですが、支払調書上、契約者が保険料を負担している前提で発行されていても、あくまでも保険料負担者が誰かで課税が判断されます。年金受給権相当額の贈与額が高額になることが多いので、大きなトラブルになってしまいます。

解説/追中 徳久 税理士

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