医療費の補填となる生命保険
2026/05/29
所得税等の確定申告が終わって休む間もなく、3月決算企業の業務に追われている先生もいらっしゃると思います。来月以降は、生命保険と法人の決算関係を考えたいと思いますが、今回は医療費控除の関係で「保険金・給付金のうち、なにが医療費の補填になるのか」を考えたいと思います。
実は何事も経験と思い、確定申告直前に、税理士会が税務署と協力している納税者からの電話相談会に参加しました。びっくりしたのは、医療費控除について多くのご質問をいただくことでした。
電話相談自体は初めてでしたが、会場での確定申告書作成のお手伝いは何度もしました。高齢の方が医療費領収書や明細書の束をお持ちになり、医療費控除の集計計算をしてくれ、ついでにパソコンでの入力もしてくれ、と依頼されました。結構時間がかかったのを覚えています。
最近は便利になり、マイナポータルでの医療費通知情報を得られるようになりました。
ただ、具体的に、生命保険のどの保険金や給付金を医療費の補填として控除してよいのか、が明確でないと思いました。
1 所得税法、施行令、基本通達の規定
所得税法第73条第1項は、医療費控除の対象から「保険金、損害賠償金その他これらに類するものにより補填される部分の金額を除く。」とあります。
また、所得税法施行令第30条第2号は、上記の対象を、「保険事故の発生に伴い支払を受ける保険金、給付金のうち、医療費の支出を補填するためことを目的とするもの」と定めています。
そして、所得税基本通達73-8(2)には、「医療費の補填を目的として支払を受ける傷害費用保険金、医療保険金又は入院費給付金等」は、医療費を補填する保険金に該当するとあります。
逆に、所得税基本通達73-9(1)には、「死亡したこと、重度障害に状態になったこと、療養のため労務に服することができなくなったことに起因して支払を受ける保険金、損害賠償金等」は、医療費を補填する保険金等には当たらないとあります。
2 具体的にどんな保険金が医療費の補填にあたるのか?
その他に、国税庁HPタックスアンサーNo.1120では、
「(1)保険金などで補てんされる金額
(例) 生命保険契約などで支給される入院費給付金や健康保険などで支給される高額療養費・家族療養費・出産育児一時金など
(注)保険金などで補てんされる金額は、その給付の目的となった医療費の金額を限度として差し引きますので、引ききれない金額が生じた場合であっても他の医療費からは差し引きません。」
とあるだけです。
それでは、例えば「がん」と確定診断されたときの、比較的高額の3大疾病保障保険金(がん・急性心筋梗塞・脳卒中を対象)はどうなのでしょうか?
確かに「がん」の治療方法には、健康保険適用外の高額な自由診療が存在します。直接医療に必要な自由診療の費用は医療費控除の対象にできます。しかし、保険金全額が医療費の補填にあてられるとは思えません。
そもそもこの保険の加入目的は、死亡保障や死亡しなくても生活費や収入の補填だからです。
3 まとめ
判断の基準は、「特定の医療費を補うために支払われたか」です。保険金と給付金などの名称の違いではありません。
ただ、
・入院給付金、手術給付金、通院給付金、がん入院給付金、がん手術給付金、がん放射線治療給付金、先進医療給付金などは補填する保険金。
・死亡保険金、高度障害保険金、就業不能保険金は補填する保険金でない。
・最近の保険商品は本当に複雑で、診療報酬点数に連動して給付金が決まるものもあります。判断に困るときは、保険金請求時に医療費の補填として医療費控除の計算の対象になるかを確認をする。
しかないと思います。
解説/追中 徳久 税理士
