法人契約の保険料30万円全損特例はどの契約が対象?/追中徳久税理士
2026/02/27
令和元年の法人税基本通達改正から7年以上が経過しました。ところが、現在でも、定期保険と第三分野保険のどの契約とどの契約の合計保険料が30万円以下ならば全額損金にできるのか、合計して30万円を超過しても30万円までは全額損金にできるのか、とのご質問が絶えません。税理士にとって法人契約の生命保険はそれなりに業務で取り扱うものの、どうしても保険会社から提供される資料や設計書で経理処理をし、通達本文をしっかり確認していない場合もあると思われます。そこで、今回は通達本文から保険料30万円以下が全額損金となる保険契約を確認してみたいと思います。
1, 法人税基本通達9-3-5
法人税基本通達9-3-5には、法人税基本通達9-3-5の2(保険料に多額の前払部分の保険料が多く含まれる場合)の適用を受ける場合を除き、(注)1、2として以下の記載があります。
「(注)1 保険期間が終身である第三分野保険については、保険期間の開始の日から被保険者の年齢が116歳に達する日までを計算上の保険期間とする。
(注)2 法人が、保険期間を通じて解約返戻金相当額のない定期保険又は第三分野保険(ごく少額の払戻金のある契約を含み、保険料の払込期間が保険期間より短いものに限る。)に加入した場合において、当該事業年度に支払った保険料の額(一の被保険者につき2以上の解約返戻金相当額のない短期払の定期保険又は第三分野保険に加入している場合にはそれぞれについて支払った保険料の額の合計額)が30万円以下であるものについて、その支払った日の属する事業年度の損金の額に算入しているときには、これを認める。」
これらの文言から、以下のすべて要件を満たせば保険料の全額損金算入が認められます。
①「解約返戻金相当額のない(ごく少額の払戻金のある)」
②「定期保険又は第三分野保険」
③「保険料の払込期間が保険期間より短いものに限る。」
④被保険者一人につき「支払った保険料の額の合計額が30万円以下」
そうすると、以下の契約の保険料は合計する必要がないことになります。
ア 認知症保険など解約返戻金相当額が多い(概ね10%超)契約
イ 養老保険、終身保険、年金保険など定期保険や第三分野保険以外の契約
ウ 契約期間と保険料払込期間が一致する有期契約
エ 被保険者一人につき「支払った保険料の額の合計額が30万円超」
なお、第三分野の医療終身保険は、多くの契約が105歳払込満了なのに保険期間が116歳なので、③の短期払契約に該当します。30万円はその年に支払った保険料で判断しますが、合計保険料が30万円を超えると、対象となる契約すべてにつき116歳までの保険期間で保険料を計算し直し、その年分の医療保険料を損金算入する以外は前払保険料として資産計上することになります。
2 法人税基本通達9-3-5の2
法人税基本通達9-3-5の2本文には、保険期間3年以上の定期保険又は第三分野保険につき、以下の記載があります。
「最高解約返戻率が70%以下で、かつ、年換算保険料相当額(一の被保険者につき2以上の定期保険等に加入している場合にはそれぞれの年換算保険料相当額の合計額)が30万円以の保険に係る保険料を支払った場合については、9-3-5の例によるものとする。」
これらの文言から、以下のすべて要件を満たせば保険料の全額損金算入が認められます。
①「最高解約返戻率50%超70%以下」
②「定期保険又は第三分野保険」
③「年換算保険料相当額の合計額が30万円以下」
そうすると、以下の契約の保険料は合計する必要がないことになります。
ア 最高解約返戻率50%以下(もともと全損)と70%超の契約
イ 養老保険、終身保険、年金保険などなど定期保険や第三分野保険以外の契約
ウ 被保険者一人につき「年間換算保険料の額の合計額が30万円超」
なお、30万円以下は年換算保険料相当額(保険料の総額を保険期間の年数で除した金額)で判断しますが、合計保険料が30万円を超えると、対象となる契約すべてにつき保険料の6割を定期保険料として損金算入、残り4割を前払保険料として資産計上することになります。
3 まとめ
このように、法人税基本通達9-3-5の短期払の第三分野保険である医療終身保険等の支払保険料30万円と、法人税基本通達9-3-5の2の最高解約返戻率50%超70%未満の定期保険等の年換算保険料30万円は根拠となる通達が異なるので、それぞれ保険料30万円を判断することになります。合計する必要はありません。同時に、これらの契約の保険料と
・養老保険、終身保険、年金保険の保険料は合計しない(定期保険や第三分野保険の保険料ではない)
・通達が改正された令和元年7月8日(短期払契約の30万円全損は令和元年10月8日)より前の契約の保険料は合計しない(国税庁から令和元年7月8日に発表されたFAQ9と17に明記)
・給与扱保険料は合計しない(同じく国税庁FAQ9と17に明記)
ことになります。ただ、悩ましいのは同じ方が、同じ内容の契約に複数の会社で加入している場合です。保険会社が異なる場合もあり、保険会社は同じ方が複数の会社で加入されていることを把握できず、適切な設計書を提供できないとも思われます。その場合は、会計主体である各会社ごとに30万円を判断するしかないのではと思われます。
解説/追中 徳久 税理士
