「放置」が一番のリスク 空き家問題の課題と対策②
2017/06/02
相続による実家の空き家問題
親が亡くなって実家が空き家となり、それを相続するといったケースが最近増えている。国土交通省の平成26年空家実態調査によると、平成25年10月に把握された空き家約1.1万件にアンケートを実施した結果、約3千件の回答があり、空き家を相続によって取得したケースは56.4%に上っていることが報告されている。また、5年後の利用意向については、31.9%が「空き家のままにする」という状況だ。
実家に住まなくても固定資産税などの保有コストがかかってくるため、その後のキャッシュアウトについて考えておく必要があるだろう。また、上記の調査でも、相続した空き家に老朽・破損箇所があるかどうかの問いで、58.9%が「ある」と答えているが、自治体から後ろ指をさされるような危険性があれば、これもまた困りものだ。
平成27年度税制改正では、一定の「危ない」空家(特定空家)の敷地にかかる固定資産税・都市計画税を増税する仕組みが導入されている。固定資産税・都市計画税には、もともと「住宅用地の課税標準の特例」という優遇制度がある(地方税法349条の3の2、702条の3)。賦課期日である1月1日時点で、住宅の建つ住宅用地200㎡までの課税標準を固定資産税では6分の1、都市計画税では3分の1にするものだ。しかし、空家等対策の推進に関する特別措置法に基づき保有住宅が特定空家と認定され、管轄の市町村から所有者等に対して修繕などの必要な措置を講ずるよう「勧告」をされた場合、この特例は適用されない。
特定空家とは、「建築物又はこれに附属する工作物であって居住その他の使用がなされていないことが常態であるもの及びその敷地」のうち、次のような状態にあるものだ(空家対策の推進に関する特別措置法2条)。
・そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態
・著しく衛生上有害となるおそれのある状態
・適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態
・周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態
もし、保有住宅が特定空家に該当しそうな場合には、勧告前になんらかの処置をしておきたい。該当しない空き家でも、放置すれば保有コストがかかるほか、人に貸すとなれば、改修の要否、マーケット動向の確認、賃貸管理リスクの検討などが欠かせない。もちろん、ほかの相続人との分割後の調整に配慮するほか、貸付後の売却時の価格下落リスク、税務面のリスクなどにも目を向けておきたい。
なお、相続した実家を処分する場合には、譲渡所得課税において特例が設けられている。一人住まいの親が亡くなって空き家になった実家を相続人が売る場合に適用できる優遇税制「空き家に係る譲渡所得の特別控除の特例」だ。これは、空き家の実家を譲渡したとき、所定の要件を満たす場合、譲渡所得から最大3,000万円を控除するというもの。
適用対象となるのは、「相続開始の直前まで被相続人が住んでいた居住用家屋とその敷地」。ただし、①家屋が区分所有建築物でないこと、②昭和56年5月31日以前に建築されたものであること(つまり旧耐震など)、③相続開始の直前まで同居人がいなかったことが前提条件。
適用対象となる人は、上記の住宅等の相続人。相続人が相続した空き家の実家を平成28年4月1日から平成31年12月31日までの間に、「一定の要件」を満たす譲渡した場合に適用される。一定の要件を満たす譲渡とは次の2つのパターンだ。
パターン1=空き家の実家を新耐震基準に適合するようリフォームして敷地とともに譲渡する場合
パターン2=空き家の実家を除却し、敷地のみを譲渡する場合
いずれも、相続してから譲渡するまでに、建物や敷地を相続人が商売など事業の用に供したり、他へ貸し付けたりしていないことが要件となる。また、相続が開始した日から3年を経過する日の属する年の年末までに譲渡すること、譲渡対価が1億円以下であることも条件となっている。
空き家や空室の問題に直面した場合には、その問題を放置することなく、将来の経済的な問題や様々なリスクを踏まえながら、的確な対策を講じたいところだ。