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税務の勘所Vital Point of Tax

中古マンション転売に係る消費税 家賃ありも仕入税額控除認める判決

2020/12/17

 中古の集合住宅等を居抜きで買って、改装などにより空室をなくしバリューアップして転売する事業を行う不動産業者の㈱エー・ディー・ワークスが、仕入れでかかった消費税の還付をめぐり国税当局と争っている事案で、東京地裁は9月3日、不動産業者の主張を認めて税務当局の更正処分等を取消す異例判決を下した。
 不動産業者が課税仕入れをした時の賃貸住宅の用途は転売のほか、消費税が非課税となる家賃収入を得るという側面もあるため、仕入れにかかる消費税が全額控除できるかどうかが争点だった。類似の裁判では国側が勝訴しているが、本件は国税当局が敗訴したため、これを不服とし控訴している。

 エー・ディー・ワークス社は、平成27年3月期から平成29年3月期の課税期間内に、住宅として一部賃貸されているマンション84棟を居抜きで購入。消費税の仕入税額控除の計算では、個別対応方式を採用。この仕入れが「課税資産の譲渡等のみに要するもの」にあたるとして、その消費税の全額を売上に係る消費税から控除し、1億9000万円弱の還付申告をした。これが事件の発端である。しかし税務署が平成30年7月に、居抜きの賃貸住宅の仕入れに関し、「譲渡資産の譲渡等と、その他の資産の譲渡等に共通して要するもの」にあたるとして、この仕入れに係る消費税の一部しか控除することができないとして更正処分等を行い、還付金ゼロとしたうえ、2億7000万円強の本税を追加し合計で4億7000万円弱の納税と、過少申告加算税約7000万円を賦課した。これにより最終的に法廷闘争にもつれ込んだ。

ポイントは仕入税額控除の処理

 争点は、居抜きで買った賃貸マンションの仕入れの用途区分が、個別対応方式の仕入税額控除の計算上「課税資産の譲渡等のみに要するもの」となるのか、それとも「譲渡資産の譲渡等と、その他の資産の譲渡等に共通して要するもの」となるのか。

 消費税は、事業者が課税売上等にかかる消費税から、課税仕入れ等にかかる消費税を控除して、納める税額または還付する税額を計算する仕組みとなっている(消費税法30条1項)。仕入れにかかった消費税は全額控除するのが理想的だが、それが可能なのは原則、課税売上高が5億円以下、課税売上割合が95%以上のときだ。課税期間中の課税売上高が5億円超または95%未満である場合には、課税売上に対応する課税仕入れ等に係る消費税額を控除する仕組みだ。

 居抜きの賃貸住宅を仕入れた場合、「住宅の貸付に伴う家賃」という消費税が非課税の売上もある。このように課税売上と非課税売上がある場合には、消費税法30条2項に従い、「控除すべき税額」を制限付きで計算することになる。

 具体的には、課税資産の譲渡等にのみ要する課税仕入れ等の税額の合計額に、課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要する課税仕入れ等の税額の合計額に課税売上割合を乗じて計算した金額を加算する「個別対応方式」による計算だ。したがって、用途区分の判定が、仕入れた賃貸マンションに係る消費税の全額の仕入税額控除の可否のポイントになってくる。

原告の請求を認容した理由

 東京地裁は、まず消費税の仕入税額控除の制度趣旨について、消費税がほとんどすべての国内の取引を課税対象とし、「譲渡資産の譲渡等」のために行われる生産や流通等の各段階に及び消費者に製品が購入されるまでに多重に消費税が課税され税負担の累積が生じるが、これを避けるため採用されたものと指摘。他方、住宅の貸付等「その他の資産の譲渡等」のためにも行われるが、この場合、税負担の累積は生じないため控除の必要はないとしたうえで、個別対応方式の計算では、課税売上割合が低い業態の事業では、「用途区分」による差が大きくなるとして「課税仕入れの用途区分に係る判断は税負担の累積の排除という消費税法の目的に照らし(中略)当該課税仕入れがいかなる取引のために行われたものであるかをその経済実態に即して適切に行うべき」とした。

 これを受けて次の条文について「仕入れ等の「用途区分」につき「要するもの」という文言を用いているのは、(中略)将来における一定の取引を目指したものということができ(中略)当該課税仕入れ等がどのような取引を目指して行われたかをみれば用途区分を判定するのに十分である」と文理解釈を進めている。

(参考)消費税法30条2項1号
 当該課税期間中に国内において行った課税仕入れ及び特定課税仕入れ並びに当該課税期間における前項に規定する保税地域からの引取りに係る課税貨物につき、課税資産の譲渡等にのみ要するもの、課税資産の譲渡等以外の資産の譲渡等(以下この号において「その他の資産の譲渡等」という。)にのみ要するもの及び課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要するものにその区分が明らかにされている場合(以下略)

 そして東京地裁は、用途区分の判断について「課税仕入れ等を行った日を基準にどのような取引のために当該課税仕入れを行ったかを認定して行うべき」とまとめ、その際、「事業者の事業内容・業態、取引の内容・状況、過去の同種の仕入れとの異同等、仕入日に存在した客観的な諸事情により認定するのが相当」としている。あてはめでは、エー・ディー・ワークス社の中古マンション転売事業について、次のように認定している。

1、本件事業は、仕入れた収益不動産(中古の賃貸用マンション等)を転売時までにできるだけ満室に近づけるリーシングやリノベーション等のバリューアップを行うことにより、その収益力や資産価値を高め、当該収益不動産の販売による利益を得ようとするもの
2、仕入れた収益不動産を賃貸することは販売のための手段と位置付けられるもの
3、原告の賃料収入は仕入れた収益不動産を賃貸することで不可避的に発生、(中略)本件事業目的との関係において副産物というべき
4、原告が本件事業において仕入れた収益不動産は棚卸資産として計上され、減価償却の対象とならないため、その購入代金が賃料収入の費用として計上されることもない
5、仕入れ時の判断において賃料収入がどれだけ見込まれるかは考慮に入れられていない。また販売時期の決定にあたっても、賃料収入が考慮に入れられていない。この結果、販売収入と賃料収入の挿話に占める賃料収入の割合は本件課税期間において3.71%にとどまる。

 こうしたことから東京地裁は、仕入日に賃料収入が見込まれることをもって「その他の資産の譲渡等」に要するものとして仕入れ税額控除額を計算することは、経済実態から著しく乖離するばかりでなく、課税仕入れに係る消費税額について税負担の累積を招くものとそうでないものとに適正に配分するという観点に照らしても、相当性を欠く」と判断。エー・ディー・ワークス社の請求を認容した。

 この判決を不服として国税サイドは控訴しているが、現に仕入日において賃貸収入がある事実は動かせず、かえって消費税の還付のし過ぎが生じている恐れがあるのではないかとの疑問も生じている模様だ。

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