税務の勘所Vital Point of Tax

再雇用した医師への一時金は退職金 審判所 税務署の賞与認定を取消し

2026/03/12

 医師の確保が難しい地域で病院を経営する法人が、定年後も勤務を続けていた医師らに支払った一時金につき、退職金に当たるか、賞与に当たるかで争いになった国税不服審判所(以下、審判所)の裁決が明らかになった(令和7年7月25日裁決)。

 問題となった一時金は、旧就業規則で定年(60歳)を迎えていったん退職した医師に支払われたもの。医師らは、その後に施行された改正就業規則に基づき、1年更新の有期雇用契約で再雇用された。その際、これまでと同じ役職・業務を同水準で継続して担うことを前提に、直近の年収が保証され、年次有給休暇は雇用が継続しているものとして付与され、福利厚生制度等も基本的に従前どおりの扱いが維持されていた。

 所轄税務署は、この一時金について法人が退職金として処理していたことを否認し、賞与に該当するとして源泉所得税等の追徴を行ったため、法人はこれを不服として審判所に審査請求を行った。

 審判所はまず、退職所得とは「退職手当、一時恩給その他の退職により一時に受ける給与及びこれらの性質を有する給与」であることを確認した(所得税法第30条)。そして、今回問題となった一時金が、「退職手当、一時恩給その他の退職により一時に受ける給与」に該当するかどうかは、①退職、すなわち勤務関係の終了という現実によって初めて給付されること、②従来の継続的な勤務に対する報償又はその間の労務の対価の一部の後払の性質を有すること、③一時金として支払われること――が必要と整理した。

 さらに審判所は、形式的には3要件のすべてを満たしていなくても、実質的にこれらの趣旨に適合し、課税上、「退職により一時に受ける給与」と同様に取り扱うことが相当と認められる場合には、退職金として取り扱うべきとの判断基準を示した。

 また、「これらの性質を有する給与」に当たるためには、「勤務関係の性質、内容、労働条件等において重大な変動があって、形式的には継続している勤務関係が実質的には単なる従前の勤務関係の延長とはみられないなどの特別の事実関係があることを要するものと解すべき」とした。

 これらの基準に照らし、審判所は医師らの再雇用契約等について次のように判断した。

1,再雇用期間の職務について退職金の支給はなく、再雇用契約は、従前の雇用契約とは雇用形態の法的性質が大きく異なる。

2,再雇用契約前と同樣の業務を行い、賃金の総額にも大きな変動等はなかったが、医師等の人材も不足していたことに照らせば、病院等の運営のために、再雇用契約前の業務等で勤務させなければならないことに相当の理由があり、従来の勤務関係が終了していないとみるのは相当ではない。

3,一時金は旧規則に基づき、基本給等の金額を基準に、勤続期間に対応する金額として算出されており、医師のこれまでの勤務に対する報償またはその間の労務の対価のー部の後払の性質を有するものと認められる。

 以上を踏まえ、審判所はこの一時金を退職金に該当すると判断し、所轄税務署が行った源泉所得税等の追徴処分を取り消した。

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