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税務の勘所Vital Point of Tax

ウーバーイーツ 兵庫県VS配達パートナー 個人事業税の課税をめぐる争い

2025/01/27

 飲食店の料理を自宅や職場など指定した場所に届けてくれるフードデリバリーサービスを展開するウーバーイーツ。自分の好きなときに好きなだけ働くことができるため、配達パートナー(以下、配達員)に登録する人も増えているが、その配達業務に兵庫県が個人事業税を賦課したところ、配達員が課税の取消しを求めて争いになった事例がある。

 裁決書によると、審査請求をしたのは、兵庫県内でウーバーイーツのフードデリバリーを行っている配達員。その業務は、①注文者が専用アプリで飲食店に飲食物を注文。飲食店が注文に応じ、専用アプリを通じて配達リクエストが配達員に送信された時がスタート、②対応した配達員が飲食店で飲食物を受け取り、注文者に配達するという流れだ。

 審査請求に当たり配達員側は、⑴与えられた仕事を言われたとおりにやり、決められた報酬体系に従って仕事をしている、⑵取引先から仕事に必要な道具の支給を受けている―などを挙げ、個人事業税は「課税されるべきではない」と主張。

 一方、兵庫県側は、①配達員が個人事業主として所得税の事業所得を申告している、②ウーバーイーツ本体から指揮監督・労務管理を受けているとは認められないため、「雇用、あるいは雇用に準じた形態とは認められない」として、個人事業税の課税される事業のひとつ「運送業」に該当するとしていた。

 両者の言い分に対し、審査庁である兵庫県(以下、審査庁)は、審査の争点を業務の「事業性」の有無と整理し、まず、次の事実を確認した。

1.配達員は、事業所得として所得税の申告を行い、その際、配達手段である自転車のメンテナンス費用などの必要経費と青色申告特別控除を差し引いて申告していた。

2.ウーバーイーツ公式ホームページや配達パートナーガイドによると、主な事項として、雇用関係がないこと、ウーバーからの所得は事業所得等となること、配達員は専用アプリにより配達リクエストを受けることはできるが、拒否することもできることなどが示されていた。

3.必要な用具やバッグ等は配達員の負担だった。

 次に、審査庁は、業務が「事業」と判定される場合の考え方を整理した。

①地方税法上、個人事業税は個人の行う所定の事業に対し課せられる。

②「事業」について定義がなされていないため、所得税法の事業と同じに考えることができる。

③これまでの判例から事業とは「自己の計算と危険において独立して営まれ、営利性、有償性を有し、かつ反覆継続して遂行する意思と社会的地位とが客観的に認められる業務」であるとされている。

④業務が「事業」に該当するかどうかは、業務の具体的態様に応じて判断することができる。

 これらを踏まえ審査庁は、配達員が用具等の負担をしていること、配達リクエストを受けるかどうかの裁量が配達員に認められていること、配達業務には営利性および有償性も認められること、事業所得として確定申告等を行っていることを挙げ、「業務を事業として反覆継続して遂行する意思と社会的地位とが客観的に認められると解することができる」と判断。

 配達員が行っていた配達業務に「事業性がある」と認定し、兵庫県の賦課決定に違法または不当な点はないとしている(令和6年10月25日)。

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