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税務の勘所Vital Point of Tax

クローズアップ判決 「1月1日時点で未登記でも固定資産税は課税できる」

2016/08/30

 固定資産税の納税をめぐる争いに対し、東京高裁は納税者の主張を認めたが、最高裁判所がそれを破棄した判決を紹介したい。

 そもそも固定資産税は、納税義務者を毎年1月1日時点における固定資産の所有者とすることを基本としている。しかし、土地や家屋は大量に存在し、自治体がその真の所有者を逐一正確に把握することは困難だ。そこで、地方税法では、登記簿または土地補充課税台帳もしくは家屋補充課税台帳(以下、両台帳を併せて「補充課税台帳」)に所有者として登記や登録されている者を固定資産税の納税義務者として課税する方式を採用している。

 この裁判では、家屋を新築して所有権を取得したものの、固定資産税の賦課期日である1月1日時点で登記簿または補充課税台帳に所有者として登記や登録がされていなかった場合、固定資産税の納税義務を負うのか否かが争点となったものだ。

 A(被上告人)は、平成21年12月7日に家屋を新築し、その所有権を取得した。しかし、翌年の1月1日の時点では、家屋の登記がされておらず、家屋補充課税台帳への登記もされていなかった。

 そして平成22年10月8日、Aは登記原因を「平成21年12月7日新築」とする表題登記を行った。これを受けて同家屋が所在する自治体は平成22年12月1日、平成22年度の家屋課税台帳に所要の事項を登録し、同日、同家屋に係る平成22年度の固定資産税の賦課決定処分を行った。Aはこの処分を違法として裁判を起こした。

 地裁判決では、Aの主張が退けられた。しかし、東京高裁は、「地方税法における家屋の所有者とは、その家屋について登記簿または家屋補充課税台帳に所有者として登記または登録されている者をいい、それは賦課期日である1月1日において判断されるべきものである。そのため、家屋を現実に所有している者であっても、賦課期日の時点において登記簿または家屋補充課税台帳に所有者として登記または登録されていない限り、家屋の所有者として固定資産税の納税義務を負うものではない」としてAの主張を認める判断を下した。

 これに対して最高裁は、「賦課期日の時点で未登記の土地や家屋について、地方税法では、賦課期日後に補充課税台帳に登録して当該年度の固定資産税を賦課することを制度の仕組みとして予定している」と指摘。そして、「土地または家屋につき、賦課期日の時点において登記簿または補充課税台帳に登記または登録がされていない場合でも、賦課決定処分が行われる時までに賦課期日現在の所有者として登記または登録されている者は、当該賦課期日に係る年度における固定資産税の納税義務を負うものとする」と判断。「Aは平成22年度の固定資産税の納税義務を負う」として東京高裁の判決を破棄した。

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