保険外交員の業務は「代理業」と判断 東京地裁 個人事業税の課税を認める
2025/06/06
生命保険会社の保険外交員19人が、東京都から個人事業税の課税対象である法定業種「代理業」に該当するとして課税されたことに対し、その取り消しを求めて争っていた裁判で、東京地裁は、保険外交員の業務は「代理業」に該当するとして課税を支持。納税者側の請求を棄却した(令和7年3月4日判決)

判決によると、生命保険募集人の登録を受けていた原告ら保険外交員は、生命保険会社との間で契約期間を1年間とし、その生命保険会社のために「専業の生命保険募集人としての仕事を行うこと」などを任務とし、その対価として「歩合制報酬の支払を受けることを約する旨の契約」または「営業社員再雇用契約」を締結して業務を行っていた。外交員らは令和3年または令和4年頃まで契約を更新しており、収入金額(歩合制報酬)に係る事業所得等について、令和3年分の所得税等の確定申告書などを提出していた。
これに対し、東京都の渋谷都税事務所長らは、外交員らの業務が個人事業税の課税対象である法定業種「代理業」に該当するとして、令和4年に令和3年分の個人事業税を賦課。さらに翌年には、令和4年分の賦課も行った。これを不服とした外交員らは、不服審査請求を経て、裁判を起こした。
主な争点は、①代理権を有しない者が行う取引の媒介業務が「代理業」に当たるか否か、②使用人が行う同様の業務が「代理業」に当たるか否かという2点。東京地裁は、地方税法72条の2第8項で第一種事業として「代理業」(23号)などが限定的に掲げられており、「代理業」の定義が特段規定されていないが、「反対の解釈をすべき特段の事由がない限り、商人の営業、商行為その他商事について規定する法律である商法(同法1条)の規定を整合的に解釈することが相当」とした。そして、商法27条を参照し、代理業とは「手数料等の報酬の収得を目的として、一定の商人のためにその平常の営業の部類に属する取引の代理又は媒介をする事業」と解釈できると判示。さらに、個人事業税の趣旨や性格を踏まえ、「商法27条の定義する『代理商』の業務の内容と異なる解釈をすべき特段の事由は見当たらない」とした。
一方、事業性については、所得税法上の事業所得が自己の計算と危険において独立して営まれ、営利性、有償性を有し、かつ反覆継続して遂行する意思と社会的地位とが客観的に認められる業務から生ずる所得をいうものと解するのが相当とした最高裁昭和56年4月24日判決を引用。その解釈を踏まえれば、最終的に「「代理業」とは、自己の計算と危険において独立して反復継続的に営まれる事業であって、手数料等の報酬の収得を目的として、一定の商人のために、その平常の営業の部類に属する取引の代理又は媒介をするものであると解するのが相当」とした。
東京地裁はこれを踏まえ、争点①「代理権を有しない者が行う取引の媒介業務が「代理業」に当たるか否か」について、外交員らが、代理権を有しない者が行う取引の媒介業務が「代理業」に当たると解することは、地方税法の規定の文言を離れて解釈するものであって、租税法律主義等に反すると主張したのに対し、「「代理業」の文理解釈に当たって商法の総則の規定である同法27条を参酌することは、当然に許されるものと解される」と判断。
また、争点②「使用人が行う上記業務が「代理業」に当たるか否か」については、「商人の使用人が使用人として行う業務が「代理業」に当たる場合があるとしても、そのことをもって、文理解釈として不合理であるなどということはできない」として外交員らの主張を退けた。なお、外交員らはこれを不服として控訴している。