個人事業税 事業性の判断めぐり 新しい業種・業態でトラブル相次ぐ
2025/02/14
個人事業税は、個人が営む事業法のうち、地方税法等で定められた事業(法定業種)に対してかかる税金。現在、法定業種は第1種、第2種、第3種に分けられ、全部で70種類ある。

近年、個人の働き方が多様化する中、新たな業種・業態も登場しているが、問題となっているのが、それらの業種・業態に「個人事業税に対象となる『事業性』があるかどうか」、「第1種から第3種のうちどの事業と認定すべきか」といった判断が難しい点だ。まさにそれが、納税者と課税庁による争いが後を絶たない要因となっている。
例えば、社会人向けのプログラミング講座の講師(ITインストラクション業務(IT講師業務))が、課税対象である法定事業の「諸芸師匠業」に該当するかどうかで争った事例がある(令和4年11月29日)。
地方税法上、「諸芸師匠業」は「第3種事業」に含まれる。取扱いを定めた東京都の事務提要によると、諸芸師匠業の範囲として、①技芸、技能等の教授、②諸芸師匠業における付随収入を挙げており、①には、「技芸等の教授には、趣味、娯楽に関するものにとどまらず、実務、一般教養、進学等に関する教授をも含むものであり、予備校、学習塾、話し方教室、ヨガ教室、料理教室、パソコン教室、簿記珠算の教授等も諸芸師匠業に該当する」とされていた。
争ったIT講師は、「職業の内容が『IT技術』であること、業務上の立場が『サブ講師』であることから、処分庁が認定した『諸芸師匠業』の事業性はなく、個人事業税の対象とはならない。したがって、請求人の業務は法定業種に該当していない」と主張していた。
しかし、東京都の審査庁は、次の事実関係を確認。
①基本的に単発の契約であり、非常勤講師に近いが、研修事業会社を通じて契約を取り交わし、日程と時間(9時から17時半までの講師業務と前後の準備、片付け)、研修会場が指定(施設、設備は契約先が準備)され、依頼に合わせて登壇していること。
②ITに関する研修において、サブ講師、サポート講師として講師業務をしており、事務提要に照らしていえば、パソコン教室で行うような技芸、技能等の教授等を行っており、教場等は設けず、企業からの委託による出張教授の方法により指導を行っていること。
これらを踏まえて審査庁は、「IT講師業務は、個人事業税の課税対象である第三種事業である「諸芸師匠業」に当たるものと認められる」と判断した。
このように、個人事業税の課税対象となる事業(法定業種)に該当するか否かで争った事例は、ほかにもたくさんある。
1.ヘルスケアのための施術を行うカイロプラクティックが個人事業税の対象となる「請負業」に該当するか否かで争った事例(納税者勝訴、東京高裁判決令和2年11月18日 最高裁令和3年7月26日上告不受理決定)
2.YouTubeに作成した動画を公開し、Googleが請け負った広告が表示される一方、広告収入の分配を受ける業務が「広告業」に該当するか否かで争った事例(石川県裁決令和4年9月5日)
3.求人雑誌に掲載する「さし絵」の制作業務が「デザイン業」に該当するか否かで争った事例(東京都裁決令和6年6月20日)
いずれの争いも、個人事業税の課税対象の事業と判断されている。