最高裁判決(2022年4月19日)以後、関信局管内で通達6項を2件に発動
2023/02/17
「財産評価基本通達」は、相続や贈与で取得した財産の評価において、公平性を担保し、納税者の負担を軽くするため、国税庁が画一的に定めた評価方法だ。
しかし、この通達に基づいた財産評価では「著しく不適当」と認められるケースもある。そこで、そうした場合に備えて、例外的に、国税庁長官の指示を受けて、この通達の評価方法と異なる評価方法で相続財産を評価する仕組みを置いている。それが、「財産評価基本通達6項」だ。
通達6項をめぐっては昨年4月19日、最高裁が先例となる判決を下して話題となった。この事案は、納税者が借入金で賃貸不動産を購入し、相続税負担をゼロにしたことに対し、税務署が通達6項を適用して鑑定評価額により相続税の増額更正処分を行ったことで争いとなったもの。最高裁は、税務署の鑑定評価額による追徴を支持し、納税者の上告を棄却している。
今後、同様の事案には当局から通達6項が適用されることが考えられるが、この最高裁の判決以後、関東信越国税局管内で2件の事案に対して通達6項が発動されていることが国税庁への情報公開で分かった。
通達6項のもたらした波紋は各方面に広がり、令和5年度与党税制改正大綱では、「相続税におけるマンションの評価方法については、相続税法の時価主義の下、市場価格との乖離の実態を踏まえ、適正化を検討する」という内容が盛り込まれた。これを受けて国税庁でも、「マンションに係る財産評価基本通達に関する有識者会議」の初会合を開催し、財産評価基本通達の改正等の検討を始めたところだ。