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税務の勘所Vital Point of Tax

寄宿舎を民泊として活用 固定資産税の増額めぐりバトル

2023/05/09

 新型コロナ禍の規制緩和を受けて、海外からの旅行客増加にともなうインバウンドに賑やかさが戻りつつあるが、こうした中、都内で約400㎡の土地の上に寄宿舎を持っていた人が、令和2年末に民泊(ホテル)に転換したところ、令和3年度の固定資産税等が2倍以上も上がった事例がある(東京都裁決、令和4年4月18日)。

 寄宿舎は、食堂やふろ場などの共同施設と居住部分がある建物で、住宅と同様に「人の居住の用に供する家屋」のカテゴリーに含められる。そのため、その敷地は「住宅用地」に該当

し、課税標準は住宅1戸当たり200㎡まで6分の1になる固定資産税の住宅用地の課税標準の特例(都市計画税は3分の1、以下、併せて住宅用地の特例という)の適用が受けられる。

 しかし、ホテルとなると、その建物は「人の居住の用に供する家屋」ではなくなるため、「非住宅用地」として住宅用地の特例の適用は受けられない。その結果、土地の固定資産税等の負担は数倍に膨れてしまうわけだ。

 裁決書によると、所有者が民泊に転換した令和2年末に、すかさず東京都の課税部門が実地調査を行い、建物にホテルなどの営業を示す看板があることを確認。さらに所在地の区役所ホームページの「旅館業許可一覧」の中で、当該ホテルが掲載されていたことを把握した。これらを受けて東京都は、令和3年度の固定資産税等について、その敷地について住宅用地の特例の適用を見送って課税したところ、所有者が審査請求で不服を申し立てた。

 だが、審査請求の書面で、所有者は公然と民泊を行っていることを自認していたことから、住宅用地の特例の適用をせずに賦課した東京都に軍配が上がった。


 住宅の民泊転換にともない、敷地の住宅用認定の取消しから増税へ至るトラブルは他にもある。

 例えば、京都市の事例は、貸家を1日の期間でも貸す短期の定期借家にした住宅家屋の敷地について、民泊の紹介サイトにこの住宅が登録されていたことなどから、税務当局が実質的に旅館、ホテルと同じようなものだとして「住宅用地」の認定を取り消し、さかのぼって5年分を課税したというものだ(京都市裁決平成29年8月7日)。この事例でも、課税担当部署による民泊関連のホームページなどのパトロールを通じて、住宅用地の認定をチェックしていることが明らかになっている。

 現在、国内では観光需要喚起による景気底上げの施策が行われている。それを横目に、住宅などを民泊として活用する動きも見られるが、住宅用地の特例の不適用により固定資産税などの保有コストが上昇することもあるので、民泊への転換は計画的に行いたいところだ。

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