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税務の勘所Vital Point of Tax

査察官の調査は違法の疑い残るが… 馬券払戻金の脱税裁判で有罪判決

2018/08/16

 勝馬投票券(馬券)の払戻金による一時所得を除外した虚偽の所得税等の確定申告(過少申告)をし、約6200万円を脱税した事件で、大阪地裁は5月9日、被告人に懲役6月、執行猶予2年、罰金1200万円の判決を言い渡した。

 この事件が発覚したのは、被告人名義の普通預金口座に日本中央競馬会(JRA)から2億3000万円余りの高額の振込入金があったことなどを、本件とは別の犯則事件で金融機関調査を行っていた査察官が発見したことが発端だ。

 弁護側は、査察官の査察調査の際にいわゆる「横目調査」あるいは「悉皆調査」といったプライバシー等を侵害する重大な違法調査がなされた可能性が否定できず、公訴権濫用として公訴が棄却されるか、可罰的違法性が認められず無罪だと主張した。

 これに対して裁判所は、別件犯則事件の調査については、その対象範囲の絞り込みが不十分であった疑いは否定できず、査察官が本件口座の情報を持ち帰った点についても、別件犯則事件の調査というよりも、むしろ被告人に対する所得税法違反の調査を主眼としていた疑いも否定できず、これらの一連の調査については違法である疑いが残るとした。

 しかし、金融機関調査は、銀行側の協力の下で行われた任意調査であり、確認すべき口座情報の範囲についても銀行側の了解を得ていることなどの事情に照らすと、査察官の行った調査における違法の程度は重大とまではいえず、査察官調査書が違法収集証拠として排除されるべきであるとの弁護人の主張には理由がないと判断。

 そして、本件のほ脱税額が合計約6200万円と多額で、ほ脱率は全体で約97.8%と高率であること、また、被告人は払戻しを受けてから具体的な税額を計算するなど、所得税の納税義務があることを認識しながら、2か年分にわたって虚偽の過少申告を行っている点を指摘。さらに、被告人は市役所で課税担当部門に所属するなど、納税者の模範となるべき行動が求められる立場にいたにもかかわらず、多額の税金を免れており、厳しい非難は免れないとした。

 ただし、過少申告をするに当たって特段の所得秘匿工作はしておらず、確定申告をしたのは別に不動産所得があったからであることなどに照らせば、ほ脱税額が多額の虚偽過少申告ほ脱犯の中では、比較的犯情が軽い部類に属すると評価すべきとして執行猶予判決となった。

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