食料品消費税 「実質ゼロ化」の課題と実現性 ~税率1%+所得連動給付~
2026/07/28
社会保障国民会議の実務者会議が6月24日に示した「中間とりまとめ(案)」では、飲食料品の消費税率を令和9年4月から2年間、1%に引き下げる案などが盛り込まれた。しかし、7月13日の実務者会議では、「中間とりまとめ(案)」にあった消費税に関する記述は削除され、「来年度を目途に社会保険料還付付き税額控除の導入を目指すべき」との方向性が示された。
給付付き税額控除の実施まで「つなぎ」措置となる税率1%案
令和8年2月の衆議院議員総選挙では、自民党が「飲食料品は、2年間に限り消費税の対象としないことについて、今後「国民会議」において、財源やスケジュールの在り方など、実現に向けた検討を加速します」との公約を掲げた。これを受け、高市首相は社会保障国民会議で制度設計を進める方針を示し、実務者会議や有識者会議において食料品の消費税率ゼロの実現に向けた検討が始まった。
しかし、その過程で、制度導入に向けたさまざまな課題が明らかになった。今年4月に開かれた第13回実務者会議では、事業者側のレジシステムなどの改修期間に関する資料が示された。「0」は割り戻し計算ができないなど、ITシステム上において特殊な数値であり、「0%」に対応できないシステムも存在する。このため、1%への引き下げであれば、最大で5~6カ月程度で改修できる見通しである一方、「0%対応」に向けたシステム改修では最大10カ月から1年程度を要するとされた。
また、消費税額が「0円」となる取引については、システムによっては非課税取引として処理されるおそれがあり、「0%」対象の価格を記載したインボイスを発行できないシステムも存在する。飲食料品の売上げが誤って非課税取引として処理された場合には、小売事業者が当該売上げに対応する仕入税額控除を受けられなくなる可能性があることも資料で示された。
こうした議論を踏まえ、6月17日の第15回実務者会議で示された議長案では、中低所得の現役勤労者の手取り増加や、いわゆる「年収の壁」による働き控えの緩和を目的として、令和11年度に給付付き税額控除を本格導入する方向性が示された。

その本格導入までの「つなぎ」として、令和9年4月から2年間、飲食料品の消費税率を1%に引き下げる案が盛り込まれた。あわせて、飲食料品に係る消費税1%相当分の範囲内で、中低所得者を対象とした所得に連動したきめ細かな給付を令和9年度から先行導入し、全体として食料品の消費税の「実質ゼロ化」を目指すことを掲げた。
6月24日に示された中間とりまとめ案も、基本的には6月17日の議長案に沿った内容となっていた。
一方、制度設計に当たっては、なお検討すべき課題も残っている。今年4月に示された、食料品消費税率ゼロに関する関係団体や専門家へのヒアリング結果では、農業・水産業関係者から「仕入税額が還付されないことを不安視する事業者もいるため、非課税ではなくゼロ税率であることを明確にすべき」との意見が示された。また、外食産業からも、「内食と外食の税負担の差が拡大し、売上げに影響を及ぼすおそれがある」「外食についても税率0%を検討すべき」などの意見が出された。
中間とりまとめでは、仕入税額控除の還付が受けられない農業従事者等について、「令和9年4月からの円滑な実施に支障が生じないよう留意しつつ、現場の納得感のある対応を検討する」としたほか、「外食産業を含めて、影響を見極めた上で、過去の様々な支援策を参考としながら、資金繰り支援等のための予算措置を検討する」とした。
一方、財源確保という課題もある。中間とりまとめでは、以下の検討を行い、「結論を得るに当たっては、国と地方の役割分担を踏まえつつ、地方の財政運営に支障が生じないよう、適切に対応する」とした。
○「所得に連動したきめ細かな給付」は恒久施策であり、その本格導入に当たっては、一時財源ではなく恒久財源を確保する必要がある。財源確保の具体策については、市場の信認を損なうことのないよう、特例公債に頼らず、たとえば、補助金・租税特別措置の見直しなど、歳出・歳入のあらゆる見直しを通じて確保することとし、今後の予算編成改革の具体化の状況も踏まえつつ、早期に結論を得る。
○制度の経過措置(つなぎ)の財源については、市場の信認を損なうことのないよう、特例公債に頼らず、たとえば、補助金・租税特別措置の見直しや追加的な税外収入の確保など、歳出・歳入全般のあらゆる見直しを通じて確保することとし、令和9年度予算編成プロセスにおいて予算編成改革を具体化する中で結論を得る。
給付付き税額控除を先行 消費税の記述が消える
ところが、7月13日に開かれた実務者会議の資料をみると、中間とりまとめ(案)の下に(給付付き税額控除の本格導入部分)とカッコ書きが記載され、その中で「来年度を目途に社会保険料還付付き税額控除(所得税・住民税)の導入を目指すべき」との方向性が示されている。
一方、飲食料品の消費税率を1%に引き下げる案や、これに伴う所得連動給付など、消費税に関する記述はすべて削除されており、今後は給付付き税額控除の制度設計を優先して議論する方向性が示された。
飲食料品の消費税率引下げをめぐっては、制度設計や財源の確保、関係業界への対応に加え、レジシステムの改修など多くの課題が残されている。消費税率引下げを含めた。制度全体が今後どのように整理されるのか、その動向が注目される。