税務バトルから学ぶ 審判所の視点 ザ・ジャッジ

「減価する資産」に当たるか? 希少なスーパーカーの取得費めぐる争い

2026/11/02

 請求人は平成4年10月、D社から平成3年式のスーパーカー(本件車両)を1億3000万円で購入した。その後、請求人は令和元年10月、E社に対し、本件車両を○○○○円で売却した(本件売却)。

 請求人は本件車両について、道路運送車両法の規定による登録の申請をしておらず、自動車登録番号標の交付を受けていなかった。また、本件車両が不動産所得、事業所得、山林所得または雑所得を生ずべき業務の用に供されていた期間はない。

 本件車両は、令和3年にアメリカで開催されたオークションに出品され、その説明文では、本件同種車両の特長として、平成2年の発売から平成4年の生産終了までの総生産台数は53台であること、高性能のエンジンを搭載し、レーシングカーとしての機能をもって公道を走行できることが掲げられている。

 請求人は令和元年分の所得税等について確定申告書を提出したが、本件売却に係る譲渡所得に関する記載はなかった。

 原処分庁は令和5年12月27日付で、本件売却に係る譲渡所得の金額を算定し、令和元年分の所得税等の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分をした。請求人はこれを不服として、令和6年3月に再調査の請求を経て、同年9月21日に審査請求をした。

 所得税法38条2項は、その価値が使用又は期間の経過により目減りする性質の資産について、取得に要した金額などから価値の目減り分を控除した金額を取得費とする旨規定している。今回の争点は、本件車両が同項に規定する「使用又は期間の経過により減価する資産」に該当するかどうかだ。

 請求人は、「売却した本件車両は、請求人が専ら観賞用に取得し、メンテナンスをせずに製造当時の状態のまま保管していたことなどから、自動車の本来の効用を果たさなかったことが客観的に明らかであること」、「本件車両は、希少価値を有し、かつ、代替性のないものであること」、「本件車両のようなスーパーカーはその希少性に基づく価格がその価値として定着し、著しく高い価格で取引されることが社会通念化している」ことから、本件車両は、所得税法第38条《譲渡所得の金額の計算上控除する取得費》第2項に規定する「使用又は期間の経過により減価する資産」に該当しないと主張。

 一方、原処分庁は、「本件車両は、レーシングカーとしての機能をもって公道を走行できることや、価値を維持するために定期的にメンテナンスを受けていたことを踏まえると、本件車両は、すぐに走行し得る状態であったと認められ、自動車の有する本来的な機能があった」などの理由から、本件車両は「使用又は期間の経過により減価する資産」に該当すると指摘した。

希少性だけで判断せず
自動車本来の機能も重視

 これに対して審判所は、「①車両の機能は、経年や使用によって一般的・類型的に逓減すること、②本件車両の価格は、その希少性だけでなく自動車本来の機能にも価値が置かれて形成されていることは明らかであること、③本件車両は製造から28年程度しか経過しておらず、本件車両と同種の車両の価格推移は未だ不確定な面があることからすると、鑑賞以外の実用的な目的または機能が想定される本件車両が、「骨とう」に類するといえる程度の長期間を経てもなお確立した高い価値を維持しているような場合に当たると解することはできず、その価値が、当該類型の資産に求められる本来的な目的・効用とは異なる面に置かれていることが社会通念上確立しているといえるような例外的な場合には該当しない」として、本件車両は「使用又は期間の経過により減価する資産」に該当すると判断した。(令和7年6月24日裁決)

PAGE TOP