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税務バトルから学ぶ 審判所の視点 ザ・ジャッジ

通謀して虚偽の請求書発行? 修繕費を計上した日付が・・・

2021/06/15

 請求人は不動産売買業などを営む法人。請求人が所有する賃貸用の集合住宅に雨漏りが発生し、請求人の代表者Aは、その修繕工事の代金の見積もりをH社に依頼。工事代金を税込3,217,860円とする平成30年1月13日付の見積書の交付を受けて修繕工事の実施を依頼した。

 請求人は、修繕工事についてH 社から「納品日」欄に「3.30」、「商品名」欄に「G修繕工事」などと記載された平成30年3月31日付の請求書の交付を受けた。だが、修繕工事は請求人の平成29年4月1日から平成30年3月31日までの事業年度終了の日までに完了しなかった。

 請求人は平成30年3月31日付で、請求書に基づき修繕工事の代金を「修繕費」勘定に計上し、本件事業年度の法人税の所得金額の計算上、損金の額に算入した。なお、請求人は本件修繕費について総勘定元帳の「修繕費」勘定の「摘要」欄に「未払金」として記載している。その後、修繕工事は遅くとも平成30年7月末日までに完了し、請求人は平成30年9月28日、H社に対して修繕費を支払った。

 請求人は本件事業年度の法人税などを法定申告期限までに申告したが、原処分庁が更正処分ならびに重加算税の賦課決定処分を行ったことで争いが勃発。争点は、修繕費を本件事業年度の損金の額に算入したことに通則法68条第1項に規定する仮装に該当する事実があるか否か。

納品日欄に記載された日付が工事完了日を示す証拠はない

 請求人は、「代表者Aは、建物の雨漏りが本件事業年度に発生しており、修繕工事は豪雪の影響で完了していないものの本来修繕すべき本件事業年度において計上すべき費用と認識していた。そのため、修繕工事の費用を確認するためにH社から請求書の交付を受けたにすぎず、請求書の納品日も請求書の発行システムの便宜上入力されただけで、修繕工事の完了日とは異なる。よって、本件請求書の発行は通謀による虚偽の証ひょう書類の作成に該当しない」と主張。

 また、「こうした認識から代表者Aは本件事業年度の費用として計上しており、所得金額を過少にする意図があったわけではなく、代表者Aの経理上の認識の誤りにすぎず、請求人には通則法第68条第1項に規定する仮装の事実はない」とした。

 一方の原処分庁は、「請求人は本件事業年度終了の日までに修繕工事が開始すらされていないことを認識していたにもかかわらず、H社に本件請求書の発行を依頼し、その依頼に基づき、H社は「納品日」欄に「3.30」と虚偽の記載をした請求書を作成・発行している。これらの行為は「相手方との通謀による虚偽の証ひょう書類の作成」に該当する」などと主張した。

 これに対して審判所は、「H社が修繕工事の実施に向けて準備を行っていたところに、代表者Aから依頼されて請求書を発行していることから、竣工前に請求書を発行しても不自然とは言い切れない。請求書の納品日欄に記載されている「3.30」についても、H社の請求書発行に係るシステムの便宜上入力された可能性が否定できない。また、請求書の納品日欄に記載された日付が修繕工事の完了日を示すと認めるに足る証拠もなく、代表者AがH社に請求書の納品日欄の日付を修繕工事の完了日として記載するよう依頼したことを示す証拠もない」と指摘。

 加えて、「代表者Aは入出金に係る会計伝票を作成するにとどまり、本件修繕費のような未払金に関する会計伝票は作成しておらず税務代理人が会計処理を行ったものであり、代表者Aに本件修繕費を本件事業年度の損金の額に算入できないとの認識があったとまでは認められない。したがって、本件修繕費を本件事業年度の損金の額に算入したことにつき仮装の行為があるとは認められない」として重加算税の賦課決定処分を取り消した。(令和2年3月10日裁決)

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