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税務バトルから学ぶ 審判所の視点 ザ・ジャッジ

借地権の有無をめぐる争い 被相続人が土地所有者に支払った地代の取扱い

2018/01/24

 審査請求人A、B、Cは、母親Eとともに、平成24年10月に亡くなった父親である被相続人Dの共同相続人となった。今回問題となったのは、請求人Aが所有する土地上に被相続人Dが借地権を有していたかどうか。

 被相続人Dは昭和56年9月、父親(請求人らの祖父)のGが所有していた土地上に建物を新築した。その後、請求人Aは、祖父であるGと養子縁組をし、同人の養子となった。

 昭和63年3月、請求人Aは、父親の被相続人Dから本件建物の持分(4分の1)の贈与を受けた。また、平成2年7月に祖父のGが亡くなり、請求人Aは相続によって本件土地を取得した。被相続人Dは、平成6年4月から平成24年9月までの間、本件土地に係る「土地代」の名目で、H農業協同組合の請求人A名義の貯金口座に入金しており、請求人Aの所得税青色申告決算書には、本件土地に係る賃料として月額32万6340円という記載があった。

 平成24年10月に被相続人Dが亡くなり、請求人らと母親Eが被相続人の権利義務を相続した。その際、被相続人Dの本件建物の持分(4分の3)は母親Eが相続している。

 請求人らは申告期限までに相続税を申告したところ、原処分庁は、被相続人Dは本件土地上に借地権を有しており、借地権の価額が相続税の計算の基礎となる課税価格に算入されていないとして相続税の各更正処分等を行ったことから争いとなった。

支払った地代は使用収益の対価とは認められない


 原処分庁は、「本件土地上に建物を有していた被相続人Dは、所有者である請求人Aに地代として金員を支払っており、請求人Aはそれを不動産所得に係る地代収入として所得税の確定申告をしていた」、「被相続人Dが支払っていた金員の額は一定で、請求人と被相続人との間で本件土地に係る通常の必要費を負担することを約していたとは認められない」、「本件金員の年額391万6080円は、本件土地に係る平成24年度の固定資産税等年税額に本件建物に係る被相続人の持分(4分の3)を乗じた金額を優に上回るから、使用貸借通達からも使用貸借とみる余地はない」などの理由から被相続人は借地権を有していたと主張。

 これに対して審判所は、「被相続人Dは、父親であるGに地代を支払っておらず、被相続人Dが本件土地の使用収益を開始した当時は使用貸借契約に基づくものと認められる。そして、請求人Aが平成2年7月に本件土地を相続により取得し、被相続人Dから金員の支払が開始されたのが平成6年4月であることから、請求人Aは、平成2年7月に本件土地に係る使用貸借契約における貸主の地位を承継したものということができ、金員の支払が開始する平成6年4月以前においては使用貸借契約に基づくものであったと認められる」と指摘。

 また、「本件金員の支払開始に当たり、請求人と被相続人との間で契約書の作成や権利金の授受がされたなどの事情は見当たらず、金員の支払開始の経緯や算定根拠も明らかではない」、「被相続人と請求人は親子であり、本件金員の支払が開始された当時、請求人が未成年者であったことを併せ考慮すると、本件金員が本件土地の使用収益の対価であると認めるに足りず、被相続人による本件土地の使用収益は使用貸借契約に基づくものであったと認めるのが相当」などとして、被相続人が本件土地上に借地権を有していたとは認めることはできないと判断した。(平成29年1月17日裁決)

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