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税務バトルから学ぶ 審判所の視点 ザ・ジャッジ

相続税の期限後申告書を提出 決定があるべきことを予知してされたのか?

2019/01/18

 請求人は、平成26年12月に死亡したAの孫。請求人の父親(Aの長男)は亡くなっており、Aの相続人は、請求人とAの長女(請求人の伯母)、請求人の姉と母の4人だった。その後、請求人の母が相続分の全部を請求人に譲渡し、平成27年7月、請求人と伯母、姉の間で、遺産の一部である預貯金を分割する旨の調停が成立。請求人の伯母と姉は、税理士を代理人として期限内に相続税の申告書を提出した。

 一方、請求人は申告期限後の平成28年10月に相続税の申告書を提出したところ、税務署が「調査があったことにより決定があるべきことを予知してされたものでないときに該当しない」などとして、国税通則法第66条第1項および第2項の規定に基づき無申告加算税の賦課決定処分を行ったことで争いが起きた。

 国税通則法第65条第5項では、期限後申告書の提出があった場合、その提出が、その申告に係る国税について調査があったことにより当該国税について決定があるべきことを予知してされたものでないときは、無申告加算税の額を軽減することが定められている。

 果たして、請求人の期限後申告書の提出は、「調査があったことにより決定があるべきことを予知してされたものでないとき」に該当しないのか――。

税務職員から指導を受けて期限後申告書が提出された
 
 原処分庁は、「本件職員は、請求人に対して相続税に係る調査の事前通知をした上で当該調査を行うことを説明したほか、調査結果の内容の説明とともに期限後申告を勧奨しており、請求人は調査があったことを認識し、期限後申告をしなければやがて決定されるであろうことを認識することができたものと認められる」と主張。


 一方の請求人は、「期限後申告書の提出は、母が税務署に電話をかけて、本件職員と相続税の申告や納税について相談し、職員から指導を受けたことを契機とするもの」、「職員から相続税の調査を行う旨を通知されたことも、何らかの調査を行っている旨の説明を受けたこともない」などとして「期限後申告書を提出しなければ、いずれ原処分庁により相続税についての決定がなされるであろうことを予知していなかった」とした。

 これに対して審判所は、「請求人は、請求人の母と本件職員との間で行われた相続税に関する相談結果を契機として、相続税の申告および納付を決意し、その後、本件職員との申告相談を経て期限後申告書を提出したものと認められるから、請求人がこのまま申告しなければやがて決定されるであろうとの認識の下で期限後申告書を提出したとは認められない」と指摘。

 また、「本件職員は、請求人の母から初めて相続税の相談を受けた際、法定申告期限を過ぎているため5パーセントの割合で無申告加算税が課される旨を説明し、請求人と請求人の母との初めての面談では無申告加算税の割合については言及せず、期限後申告書が提出されることとなった面談の際、通則法第66条第1項および第2項の規定に基づく無申告加算税が課される旨の説明を初めて行ったものと認められる」ことなどを踏まえ、「そもそも期限後申告書の提出に至るまで、請求人が相続税に関する調査を受けていたとの認識を有していたと認めることはできず、請求人の期限後申告書の提出は『調査があったことにより決定があるべきことを予知してされたものでないとき』に該当する」として無申告加算税の賦課決定処分の一部を取り消した。(平成30年1月29日裁決)

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